急激に老け込んだ愛妻の姿に
我が目を疑い、愕然とした

「真理衣ちゃん(仮名・59歳)、元気なさすぎだと思わない。あのままおばあちゃんになったら可哀そうよ。まだ若いんだから」

 ある日大さん(仮名・64歳)は、妻の親友から電話で、そう責めたてられた。妻は元芸術家。人一倍アクティブで、奥様というよりは外様(そとさま)タイプ。一時期、大さんの仕事の関係でヨーロッパに住んでいた時も、まったく臆することなく出歩き、気がつくと自宅は、真理衣さんが現地で知り合った友人が頻繁に訪れる、国際色豊かなサロンと化していた。人目を惹きつける美貌と巧みな話術、その上世話好きな彼女は実に魅力的で、まさに自慢の妻だった。

 ほんの5年前までは。

「急に顔がカーッと熱くなって、汗が噴きだすのよ。それになんだかイライラするの」

 など、典型的な更年期障害の症状を訴え、つらそうにしていることが増えた。

 (長年の疲れか、それとも、本人が気つかない間にストレスが溜まっていたのかもしれない)

 心配した大さんは、身体によさそうな料理を研究して作ったり、温泉旅行に誘うなどして気遣った。そうこうするうちに真理衣さんは閉経を迎え、つらい症状からも解放されたように見えていたのだが、このところまるで元気がない。

「だるくて仕方ないの。ときどきめまいがするし、いくら休んでも疲れがとれなくて」

 なんて言いながら、リビングのソファに横になっている。大さんにとってショックだったのは、ある日の夕方、外出からの帰りに偶然、前を歩く真理衣さんを見かけた時。