東日本大震災後を経て、買い溜めや供給の断絶といったかつてない異常事態に見舞われたコンビニ業界。しかし、「近くて便利な街のコミュニティ」としての魅力が再確認されたこともあり、混乱の足音が遠のいた現在も、コンビニ各社は好業績を続けている。競争が激化の一途を辿る飽和市場で疲弊が報じられてきた各社に、いったいどんな変化が起きているのだろうか。市場関係者の話を通じてその背景を探ると、一時の好況に安住できないコンビニ各社の課題が浮かび上がってくる。(取材・文/友清 哲、協力/プレスラボ)
「近くて便利な街のコミュニティ」
大震災で見直されたコンビニの好況
「一時は見事に空っぽになってしまった棚を見て愕然としたものですが、今にして思えば、ごく短期的なトラブルに過ぎませんでした。東日本大震災の影響は甚大ですが、この国のコンビニという“ライフライン”は、ガスや水道よりもよっぽど屈強なのではないかとすら感じますね」
そう口にするのは、都内の某大手コンビニエンスストアのスタッフだ。
震災から数週間、不安におののく人々がミネラルウォーター、パン、カップ麺、トイレットペーパーなどの買い溜めに殺到する一方、サプライチェーンの断絶で新たな商品が店舗に届かないことにより、コンビニやスーパーの商品棚はガラガラになった。誰の目にも衝撃的に映ったこの光景は、まさしく未曽有の災害下の出来事であることを、如実に感じさせたものである。
しかし、日本の物流は我々が考えている以上に強かった。首都圏や北関東はもちろん、深刻な津波被害を被った沿岸部以外の東北エリアでも、3ヵ月を経て着実に商業活動が再開している。それどころか、足もとでは震災で窮地に陥ったはずのコンビニ業界の好調ぶりが、盛んに喧伝されているのだ。
具体的に5月の既存店売上高をチェックしていくと、確かにコンビニ各社の躍進は目覚しい。セブン&アイ・ホールディングス傘下のセブン-イレブンが対前年比6.5%増、ローソンが同5.6%増、ファミリーマートも同2.4%増と、相変わらず苦戦中の百貨店や外食産業とは対照的な好業績を上げている。