節電は実質使用制限
悪質な場合は、罰則も
今夏、日本政府はピーク時の消費電力を昨年比15%削減する節電目標を設定した。主に空調と照明に電気の使用が限定されるHCにとって、この目標達成は意外に難しい。夏を目前にしたいま、何をすべきか。
東日本大震災により、東北電力と東京電力の発電能力が損傷したことから、日本政府は7月から9月まで、ピーク時の消費電力を昨年比15%削減する節電目標を設定した。
この節電目標に従い、両電力会社の管内に店舗を持つ小売業も節電に取り組まなければならない。すでに5月18日には、スーパーマーケット(SM)3団体が、経済産業省の担当者を招いて説明会を開催するなどの動きも出ている。HC業界に対しても、すでに日本DIY協会(東京都)を通じて通達されており、夏を目前に節電対策が急務となっている。
今夏の電力ピーク需要について、東京電力は6000万kW、東北電力は1480万kWと、想定している。これに対する供給電力量は東京電力が5520~5620万kW、東北電力は1370万kWで、東京電力は6.3~8.0%、東北電力は7.4%の供給不足が予想される。この予想値に発電に伴う技術的リスクを考慮して15%の節電目標が設定されたが、これは単なる努力目標ではなく、使用制限と言ってもいい。契約電力500kW以上の大口事業者に関しては、目標が守られず悪質だと認められた場合には、罰則もある。
「15%の節電目標」といわれるが、今回の目標はあくまでもピーク時の消費電力が対象だ。電気の使用量は、電気の発電総量を示す「kWh(キロワットアワー)」と、瞬間的な電気の発電や消費を示す「kW(キロワット)」によって示される。「kWh」は電力計、「kW」はデマンドメーターにより、それぞれ測定されているが、今回の節電目標は、ピーク時の「kW」を対象としている。とくに夏の午後1~3時ごろは、気温が上昇しエアコンの稼働率が上昇するため、電気の使用がピークになるが、この時間帯の節電がとくに求められている。
節電目標を、省エネHCづくりの良い機会にすべき
「節電」といっても、HCの場合、電力を使用するのは、空調と照明が大半。SMのように、電力消費の大きい冷凍・冷蔵機があるわけではない。果たして、どこまでの節電が可能なのか。
省エネルギー関連のコンサルティングを行っている環境経営戦略総研(東京都)の村井哲之社長は、HCの省エネを手掛けた経験を踏まえた上で「HCは、少人数でオペレーションが実施されているため、運用改善ができずに、過剰な冷暖房が行われていたり、展示商品にムダな電気が使われているケースが意外に多い」と指摘する。しかも忙しければ、電力使用に気を配る機会も限られる。
村井社長は「今回の節電目標の設定を、どこよりも少ないエネルギーで運営されるHCを考えるための良い機会にするべき」と強調する。
ここで重要なのが、自社がどのように電気を使用しているかをまず把握することだ。そこで必要になるのがデマンドモニターだ。電力会社が設置するデマンドメーターは瞬間的な電気の最大使用量を表示するだけで、時間ごとの使用状況はわからない。ここに電気のパルス信号を受けて、時間ごとの使用状況を計測できるモニターを取り付け、電気の使用状況を把握するのである。
使用状況がわかれば、さまざまに活用できる。たとえば、今回の節電目標15%は、店舗ごとではなく、企業全体における使用量を対象としている。各店の使用状況と売上や立地条件も加味して、店ごとの対応を考えることもできる。また、これを機会に昨年夏の使用量から節電目標を設定して、全社員に節電を意識させれば、運営改善にもつながるはずだ。さらに、電気の使用状況を把握した上で、売場をブロックに区切り、空調や照明の必要性について検討すれば、これまでのムダな電気の使い方を見直すきっかけにもなる。これらと並行して電気の使用状況を携帯メールで関係者に送信すれば、節電意識も高まるはずだ。
主に電気の使用が空調と照明に限定されるHCだが、それだけに電気使用のムダに対して、深く切り込まなければ節電は難しいともいえる。
今回の節電目標の設定は、店舗運営の効率運営を考えるきっかけになる。
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