中国のパソコン市場が転機を迎えている。

「中関村」は、北京に住む人々にとっては、秋葉原のような存在

 北京の「中関村」という場所をご存知だろうか。中国随一のパソコン市場、日本でいうところの秋葉原である。

 清華大学や北京大学といった中国を代表する大学のほか、レノボや百度、Googleなどの国内外のハイテク企業そして国の研究所もオフィスを構えており、日本の“つくば”的な顔も併せ持つ場所だ。

 さて、この中関村のランドマークといえば、パソコン小売店を無数に抱え込む巨大な電脳ビル群だが、そのひとつ「太平洋電脳城」が6月末に閉店してしまったのである。

 太平洋電脳城撤退後には、北京大学のオフィスがテナントに入る予定だという。太平洋電脳城は中関村のパソコン市場の最も外れにある巨大電脳ビルだが、それでもこのニュースは中国のパソコン業界関係者に衝撃を与えた。彼らからすれば、歴史的な大事件といっていいだろう。

閑散としている「中関村」の店舗内

 近年、中関村内でのパソコンショップ間の競争が高まるにつれて、知識のない客に定価以上の価格で売りつける店が目立つようになり、それを知った消費者が訪れないという負の連鎖が起きていた。

 また、北京は中国で最も政治に敏感な都市である一方、インターネットが最も普及し新サービスが最も早く普及する都市でもある。かつてGoogleが中国の検閲を嫌って検索市場から撤退を発表した時には、北京のGoogleオフィス前に多くの市民が献花したが、その背景にはこうした北京の先進性があった。それだけに、強引な客引きは、逆効果というものだろう。詳しくは後述するが、ITリテラシーの高い若者を中心に、オンラインショッピングへのシフトを加速させてしまうだけだ。

 むろん、中関村も完全に努力を怠っているわけではない。アニメやゲームの市場を設けたり、メーカーの旗艦店やオフィシャルショップを誘致したりもしている。しかし、日本の秋葉原のような工夫、すなわち「通の人にわかるこだわりの品揃え」や「ここだけでしか売っていないモノを揃える」といった工夫がなされていないのである。その結果、人の流れはどんどん減少している。

 しかし、この種のリアル店舗の苦戦は、じつは北京のパソコン市場に限った話ではなさそうだ。