さて、今年2月の段階で塩崎厚生労働大臣は、これら加熱式タバコについて「受動喫煙規制の対象外」という見解だったが、3月にその見解が一転して、「加熱式タバコも規制対象」ということになってしまった。

 加熱式タバコは、喫煙家にとっても、受動喫煙の影響を受けるタバコを吸わない人にとっても、健康の切り札になるのではないかと言われてきた。先ほど述べたように、タバコ規制の最大の根拠は、副流煙と呼ばれる紙巻きたばこを燃やすことで出る煙が有害で、それを吸いこんだ周囲の人の健康が害されるという懸念だった。

政治の思惑に翻弄されそうな
加熱式タバコの不確かな未来

 そのような健康被害をなくすために開発された加熱式タバコを規制外とするか、それともタバコはタバコとして一律規制するかは、実に政治的な問題である。法律をどちらにするか次第で、未来が結構違ったものになる。

 仮に、加熱式タバコだけはパブリックな場所で吸っても良くて、規制もそれほど厳しくない法律になると、現在のタバコ需要の大半は加熱式タバコに移行することになるだろう。一方で、加熱式タバコも同じ規制を受けることになれば、紙巻きタバコは商品としてまだまだ延命することになる。健康だけを考えれば、紙巻きタバコがなくなる未来をつくったほうがよいはずだ。

 にもかかわらず、官僚の一存で「加熱式タバコは規制外」とされたあたりに、今回の騒動の根っこがありそうだ。

 厚生労働省の改正案では、「今後健康への影響を十分に調べ、影響がない場合は規制対象から外す」と言う内容になっている。市場で先行するフィリップモリスの調査で、「健康への影響はかなり低い」という結果が出ているのだが、厚生労働省としてはまだ調査が十分ではないので、「とりあえず今は禁止して後から見直したい」という方針だ。

 論理的には、そのことでアイコスの販売ペースは落ち、紙巻きタバコは商品として延命されることになるだろう。国民の健康を考えたら、これはちょっと不可解な方針だが、ひょっとして官僚は加熱式タバコで出遅れている日本たばこ産業の経営への影響や、アメリカ製の加熱式タバコを購入しづらい我が国の国会議員の立場を忖度しているのではないか。いや、それはちょっと勘繰りすぎだろうか。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)