建物内禁煙としたら、小さな飲食店は本当に潰れるのか――。受動喫煙防止法案を巡って、反対派は小規模飲食店の存続危機を理由にしているが、世界の禁煙先進国を見ると、この攻め方はいかにもまずい手だということが分かる。(ノンフィクションライター 窪田順生)
渡邊美樹氏の発言では
禁煙化を食い止められない
厚労省が「飲食店は原則禁煙」を打ち出している受動喫煙防止法案を巡って、反対派が「禁煙になったら小さな店が潰れる」というストーリーを強く打ち出し、攻勢をかけている。
今月3日、「日本経済新聞」で「受動喫煙防止法案、外食産業に8400億円の打撃」という報道がなされた。ちなみに、この8400億円は、富士経済が居酒屋やレストラン1020店の責任者たちの「売上予測」を聞いて試算したもので、禁煙学会などは「フェイクニュース」だと厳しく批判をしている。
ただ、そんな報道よりネットで注目を集めているのは、自民党・渡邊美樹氏の発言だ。5日に自身のブログで、「現実問題として10坪以下の飲食店で禁煙にしたら、間違いなくお店は潰れます」と断言したのである。
ご存じのように、渡邊氏はワタミの創業者。「居酒屋経営を極めたプロ」という立場から、10坪以下の飲食店を規制の対象外にすべきだと提言していらっしゃるのだ。
ただ、規制を緩めていくという目的を考えると、このメッセージはあまりよろしくない。世界的なタバコ規制の流れを見ると、「禁煙にしたら小さい店が潰れるぞ」という攻め方は、完全に「負けパターン」となっているからだ。
しかも、もっと言ってしまうと、現実としては渡邊さんが主張されることと逆で、「小さな店を例外にした方が経営難に追い込んでしまう」という側面もあるのだ。