2010年12月の発売以来、日本でもザッポスおよびトニー・シェイのファンを増殖させている書籍『顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説』ですが、これまで9回に渡り、日本のさまざまな層のザッポス伝説ファンの情熱を紹介してきました。今回から数回にわたって、渡米して、直接ザッポス・ファミリーに話を聞き、同書に書ききれなかった内容や出版してからの新たな動きについて、まとめていきます。まずはザッポスCEO(最高経営責任者)・トニー・シェイに、ザッポスのこれからと、いま注力していることについてうかがいました。

本、ザッポス、ダウンタウン・プロジェクト

トニー・シェイ(Tony Hsieh)
ザッポス・ドットコムCEO。台湾からの移民の親を持ち米国で育ったが、小さい頃から何度もビジネスを創っていた。ハーバード大学でコンピュータ・サイエンスを学び、オラクルに入社。オラクル在職時に共同創業したインターネット広告ネットワーク会社LinkExchangeを、1999年にマイクロソフトに2億6500万ドルで売却(当時24才)。同年、ザッポスにアドバイザーと投資家として関わり、やがてCEOとしてほぼゼロから売上高10億ドルを超える企業にまでザッポスを成長させた。書籍『顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説』の著者。

「いまは1割を『Delivering Happiness』、9割がザッポス、特にダウンタウン・プロジェクトに時間を割いています。『Delivering Happiness』(ザッポス伝説の原題)は、本のプロジェクトとして始まりましたが、いまやその枠を超えて、ジェン・リムとともに同名の会社を設立し、ハピネスを世界に届けるためのさまざまな活動を進めています。

 5年前から新しいキャンパス(ザッポスの本社)の候補地を探してきましたが、ラスベガスのダウンタウンはベストな選択だと思います。ダウンタウンは『楽しさとちょっと変わった』というコアバリューに合います。そして経済的にも現実的なレベルになり、決めました。

 6月に正式にラスベガス市議会で承認されましたが、ラスベガスのザッポス・ファミリー1200人がシティ・ホール(ラスベガス市庁舎)に移り、これをザッポス本社にします。ここには2000人まで収容できますが、いずれキャンパスを拡張できるように土地を確保します」

 6月20日の月曜に、ザッポス本社そばのアメリカン・レストランのランチをともにしながら、トニー・シェイは、目下の最大の関心事としてダウンタウン・プロジェクトのことを語ってくれました。同プロジェクトは、2010年11月に明からにされ、12月1日ラスベガス議会で基本案が審議され、満場一致で内定しました。