パリ協定採択を主導したオバマ前米大統領は、「現政権が拒否しても、州や企業が率先して地球を守る」と今回の決断に不快感を表明した Photo:AP/アフロ

 大方の予想通り、トランプ米大統領が、温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からの脱退を宣言した。

 6月1日の離脱表明では、中国にくぎを刺すことを忘れなかった。「中国は今後13年も温室効果ガスを増やせるのに、米国はできない。非常に不公平だ」──。

 同時に、オバマ前政権時代に最大30億ドル(約3300億円)を拠出するはずだった国連の「緑の気候基金(GCF。途上国の温暖化対策支援を行う)」への参画もストップすると明言。米国は、温暖化に関する国際交渉の舞台から降りることになった。

 振り返れば、1992年の地球サミットから始まった温暖化交渉は、関係各国の利害が一致することなく幾度も暗礁に乗り上げた。2005年の京都議定書の有名無実化、09年の国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15。コペンハーゲンで開催)での交渉決裂を経て、ようやく結実したのが昨年発効したパリ協定だっただけに、世界の失望感は大きい。

 米国が本気でパリ協定をキャンセルする場合、手続きに時間を要し離脱は最速でも20年11月になることから、日本をはじめとする主要国は「粘り強く米国の参加を慰留する」(環境省幹部)方針だ。ただし、パリ協定の上位条約である気候変動枠組み条約から離脱する場合は、離脱までの猶予は1年しかなく、説得の期間は限られる。