「我々はどういうポジションにあるのだろうか、ポジショニングを認識したうえで、どういう伝え方をしていったら学生が惹きつけられるのだろうか」。そうした考え方を軸に、採用活動を考えてみたのです。

 ほかでもない。「三幸製菓ならではという価値はなにがあるのか」。それを軸に様々な検討をした結果、いくつか見つかったポイントの中から「成長」という点にフォーカスしようと思い至りました。

 三幸製菓は、私が入社した2001年ごろから急成長を果たし、2001年に年商168億円だったものが、12年には年商491億にまで成長を遂げています。

 売上成長力が高い、すなわち、三幸製菓という会社は成長していて、働く社員にも成長できる機会が提供される環境である、ということを伝えていこうと考えました。キーワードとして「成長」というその1点だけに絞り込んでコミュニケーションを行っていこう、ということに決めたのです。

学生に伝えたいキーワードを絞り込む

 就職活動の合同説明会では、学生は1日に多ければ十数社を見てまわります。どんなにこちらが一生懸命説明したとしても、各社それぞれの話を覚えているわけがありません。

 何も覚えてもらえないくらいならば、徹底的に「成長」という言葉だけを覚えてもらおうと考え、会社の事業内容や、入ってからの仕事内容などのその他の情報を全て捨て、「成長」の一点に絞り「自分たちがいかに成長しているか」だけを伝えるプレゼンをしました。

 さらに言葉だけではなく、様々な面からブランディングも行いました。まず、熱量が高く、成長している会社であることを学生に伝えるために、就職サイト、合同説明会でのブースの色などは「真っ赤」を基調にすることにしました。

 また、色使いだけではなく、会社の勢いを感じてもらえるよう、説明会用の配布資料も“巻物”のようにして「なんだかよくわからないけど気合の入った成長企業を見つけた」という印象を残す工夫も施しました。

 このように、キーワードを「成長」ということに絞り込み、各種のコミュニケーションを成長をイメージさせる色合いやメッセージ内容に統一していったのです。

 その結果どうなったか? 結果は、想像を超えるものでした。

 1日100名程度だった合同説明会動員数も1日2000名以上ブースに来てくれるようになり、エントリー数も当初300名程度だったものが、最高で1万3000名を超えるまで増えていきました。

 知名度が低い地方企業でも、徹底的に「ポジショニング」を考え、メッセージを「成長」に絞り込むことで、このような爆発的な上昇を果たすことができたのです。