たとえば経験学習の促進については、人事異動を活発に行い、社員に多様な経験をさせるようになりました。

 そのことは経営が意識していないと、なかなかうまくまわっていきません。

 その人物が優秀であれば優秀であるほど、上長は彼(女)を手放して、異動させようとはしないからです。人事も現場に気を使って、人事異動をためらうこともある。それでは、人財開発企業になることはできないでしょう。

 人事異動によって、社員は複数の経験ができるだけでなく、複数の上長や職場の仲間から、観察してコメントをもらうことができます。異動せずに同じ部署にとどまるケースと比較すると、経験学習を深く浸透させることができるはずです。

社員は仕事を割り振られるのではなく、選ぶ

 ヤフーが人財開発企業になるためのもう1つの方法「社員の才能と情熱を解き放つ」はどうでしょうか。

 ヤフーでは、会社が決めた仕事を社員に割り振る(アサインする)のではなく、社員が自分の仕事を選ぶ(チョイス)することを理想としています。

 現実はそううまくはいきません。しかし、会社のために、組織が与えた仕事をするのではなく、自らが才能と情熱を解き放つ仕事を選ぶほうが、会社にとっても本人にとっても合理的であるという考え方をもっています。

 たとえば、目標管理制度(MBO)に代表される人事評価制度は、1990年以降、日本企業のスタンダートであったと思います。しかし、MBOによって、強く動機づけられた社員の話を不思議と聞きません。自分の経験を振り返っても、評価を上げるために頑張った経験は少ない。

 むしろ、誰かが自分を必要としてくれて、自分にも貢献できるという自信があったり、このプロジェクトで自分が成長できそうだという予感があるときのほうが、仕事を頑張ろうと思えたように思います。

 もちろん、お金がともなわなければ、仕事で頑張ろうとは思わないというのも事実だとは思います。しかし、それでも、これまでの人事評価の仕組みは、前述したように、誰かに必要とされ、自らの才能を伸ばしているという感覚や実感を軽視していたように感じます。