経営者はしばしば≪部下や従業員が自分と同じ感覚で仕事してくれたら…≫と思い、ついつい「経営者の立場で…」と言ってしまいます。しかし、これは軽々しく使ってはいけない危険な言葉なのです。なぜ、危険なのでしょうか。解説したいと思います。(株式会社識学代表取締役社長、組織コンサルタント 安藤広大)
従業員が
「社長の立場」で考えると危険
「経営者の立場で」――。
多くの会社で、社長が社員に向かってこのように発言されているのを聞いてきました。《従業員全員が、自分と同じ感覚で仕事をしてくれたら間違いなく会社は成長する》、そんな気持ちから社長はそのような発言をされるのでしょう。
私自身も、サラリーマン時代にはこのように言われ、「経営者の立場で」考え、行動しようとした記憶があります。しかし、社長のこの発言は非常に大きな危険をはらんでいます。どんな危険かと言えば、組織運営がうまくいかなくなる危険、そして、従業員の成長速度が急激に落ちる危険です。
では、なぜ、この発言によって問題が発生するのでしょうか――。
理由は簡単です。従業員は経営者ではありません。ですから、「経営者の立場」で考えられるはずがないのです。立てるはずがない経営者の立場にいるという勘違いを起こすのが、一番危険であるということです。
なぜ、経営者の立場から考えられないのか。当然、立場が違うのですから入ってくる情報をはじめ、見えている景色がまったく違います。そして、持っている責任の重さも、種類もまったく違うからです。