もちろん、アマゾンが主力商品として展開してきた本や音楽DVDなどは、時間がたてば流行り廃りもあり、質的な価値は劣化するモノである。しかし、本を形作っている紙、DVDを形作っているポリカーボネートなどは、物理的な価値は短期的には劣化しない。販売拡大を模索している衣料品や日用品なども基本的には同様であり、アマゾンは「腐らないモノ」を中心にラインロビングすることで業容を拡大してきた。仮に質的に劣化した商品が増えたとしても、時間をかけながら売価を下げてECで販売していくことで、在庫を削減することは可能である。

Eコマースには限界があり
未開拓の大陸だった「食品」

 そうしたアマゾンにとって、残された未開拓の大陸は「食品」であった。もちろん、従来もミネラルウォーターなど、消費者がスーパーで購買して持ち帰るのが不便な大きなモノ・重いモノについて、アマゾンは莫大な取扱量の獲得に成功してきた。しかし、生鮮食品や賞味期限が短い加工食品については、ECだけでの対応には限界があり、本格的に消費者の支持を集めるような取り組みができていなかった。

 近年、冷凍技術やチルド技術の発達によって、先進国の消費者はより本物に近いモノ、よりおいしいモノ、よりレストランの食事に近いモノを求めるようになっている。こうした半生(はんなま)のような食品は、ECの仕組みを使って日単位・週単位で値下げしながら売り切ることに適した商品ではない。

 筆者も大手スーパーの再生に携わっていた頃、店頭で野菜・果物など生鮮食品を販売する朝市のお手伝いを定期的に経験したことがある。時間単位で売れ行きを見ながら、売り場のフェイスを変更し、売価をこまめに変更し、そして時間内で売り切る現場能力には正直舌を巻いたことが少なくない。

 アマゾンは、食品の取り扱いを強化していく過程で、プライベートブランド(PB)商品の開発という戦略をとると思われる。その際に、在庫を一気にさばく仕組みは必須となってくる。しかも、消費者がより付加価値を感じる商品を追求すればするほど、賞味期限が短めの商品になる可能性があり、そのPB商品開発の成否の変動(ボラティリティ)を吸収するような仕組みが不可欠となる。400店以上のリアル店舗を抱えるホールフーズは、こうしたアマゾンの戦略に極めて合致したM&A対象であったと推測される。