
松岡真宏
時価総額上位企業を創業年別にみると、日本では新興の大手企業が不在である一方、アメリカでは比較的最近に創業された企業が多くある。ただし欧州では上位10社のほとんどが第二次大戦終結前に創業された企業だ。社歴の長い欧州企業の時価総額が大きい理由を明快に指摘するとともに、アメリカを志向しがちな日本の企業経営者が学ぶべき対象として欧州企業に注目すべきであることを解説する。

岸田首相が24年4月からライドシェアを一部解禁すると表明したが、ライドシェア導入について賛否両論が飛び交っている。過疎地への対応や経済活性化の効果を期待する声がある一方で、タクシー・ハイヤー業界からは反対論が示されている。こうした議論は「既得権益者vs新規参入者」の構図になりやすいが、経験や感情に基づく議論に終始しがちだ。コンサルティング会社経営者が、「外部性」という考え方をもとにアメリカの事例を紹介しながら、ライドシェア議論のあり方を提示する。

日本の「お葬式」を飲み込む低価格競争、葬儀業界のブラックボックスをこじ開けるか?
葬儀費用の低価格化が進展しており、1件当たり葬儀費用は2000年の145万円から2022年には113万円と20%強も低下した。葬儀費用の低価格化の背景として、人口動態、コロナ、新興業者の台頭を指摘するとともに、米英中の葬儀業界の様子を紹介し、葬儀業界が確固たる成長産業となるためのカギを解説する。

GAFAMを除くS&P500はTOPIXの動きと大差がないことから、米国株式市場の好況は結局GAFAMの存在次第ではないかと考えたくもなる。しかし株価指標は方向性に過ぎず、米国経済の強さの本質はGAFAMのみにあるわけではない。日米の株価、時価総額、上場企業数など複眼的な視点から米国経済の強さをあぶり出し、GAFAMやシリコンバレーという華々しい言葉を捨象し、冷静に米国経済の強さを眺める重要性を指摘する。

コンサルティング会社からは毎年一定数の退職者が出るが、その多くは起業をしたり、スタートアップ企業へ入社する。以前は起業やスタートアップへの転職は大きな賭けだったが、退職する彼らにリスクを背負う悲壮感はない。コンサルから起業・スタートアップへ転身する背景として、「セーフティネット」という考え方があることを紹介するとともに、スタートアップ振興策としてベンチャーキャピタルなどリスクマネーの拡充だけでなく、セーフティネットという考え方を活用したスタートアップ振興策を提案する。

お祭りや花火大会で有料観覧席が増加している。ここ数年は、富裕層や外国人観光客をターゲットにして1席数十万円の高額観覧席も導入されている。これらを非常識な高額と見るかどうかは意見が分かれるだろうが、今まで有料観覧席が一般的でなかったことが、貴重な観光資源が十分に活用されていなかった証左とも言える。有料観覧席のあり方や活用法に改善の余地は大きいことを指摘するとともに、有料観覧席やダイナミックプライシングを活用することで、”令和”の合理性が得られる可能性を展望する。

駅前の一杯飲み屋街が取り壊されるなど都市の生まれ変わりを否定的に捉える見方がある。しかし、こうした古い街並みへのノスタルジーは、男性目線の都市空間に立脚しているという意見もある。伝統的な都市空間は、女性に不自由を強いてきたとみることも可能だ。国内社会学者の意見や19世紀の欧州における都市空間のあり方から、商業空間の光を過小評価する恐れを指摘するとともに、ESG時代における令和の「列島改造論」の可能性を論じる。

日本株好調の背景の1つに日本取引所グループ(JPX)が低PBRを問題視したことが大きい。JPXの山道裕己CEOは、PBR1倍割れの上場各社に対し、早期の対応を促した。取引所がPBRについてコメントすること自体、資本主義国として一般的ではないだろうが、そうせざるを得ないほど、日本株のPBRは低位にある。上場企業各社は更なるPBR改善に向けて邁進する必要がある。PBRという指標をいくつかのパラメータに分解し、PBR改善におけるマクロ政策の重要性を論じる。

ラーメン店は全国に2万4,000店舗以上あり、約5,000店舗ある牛丼店やカレーライス店を大きく上回っているため、ラーメン業界は「レッドオーシャン」の典型のように見える。しかし、そんな業界にいながら、ハイデイ日高とギフトホールディングスは成長を続けている。両社の経営戦略を整理するとともに、戦略の裏に隠れた両社の狙いを解説する。

日本の果実品種の海外流出が問題化している。農水省によると、シャインマスカットの中国への無断流出による損失額は、年間100億円以上に達するとされている。果実品種の流出を食い止めることが難しい理由を整理するとともに、ブランド苺「あまおう」の事例などから、日本の果樹産業振興のあり方を考える。

世界各国がポストコロナに疾走する中、日本では、マスク着用が個人判断となるだけで、海外出張などはコロナを理由に控えられたままだ。ポストコロナにおける米中欧のと日本の違いをM&A件数や設備投資額から確認し、日本が世界から遅れないためになすべきことを提言する。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、「この国の構造的な労働力不足は、すぐに解決される可能性は低い」と発言するなど、米国の人手不足感は続いている。米国におけるマクロ的な雇用のひっ迫を緩和させてきたのは、ベビーブーマーによる引退の延期というユニークな指摘を起点に、米国での人手不足解消策を俯瞰するとともに、日本での人手不足解消策のあり方を考える。

ESG(環境・社会・ガバナンス)経営を進めるにあたっては、日本企業の視座でESGを理解し、戦略的なESGの活用方法を能動的に模索することが重要だ。ESGに専門的な知見を持つ現役コンサルタントらが、企業のビジネスパーソンが心得るべき「実践的なESG」に関して提言する。

セブン&アイ・ホールディングスが、百貨店子会社「そごう西武」の売却先を、ファンドとヨドバシカメラの連合に決定し、西武池袋本店の低層階にヨドバシカメラが出店されることに対して、豊島区の高野之夫区長は、反対意見を表明した。主要メディアやSNSの反応は区長に手厳しいが、区長の発言が時代錯誤な越権行為とは直ちには言えない。かつてナンバーワンの小売業アナリストであった筆者が、区長発言を2つの観点で整理し、家電量販店の”文化”論争が不毛であることを指摘する。

GAFAMに代表されるグローバルIT企業が、メタバースと呼ばれる仮想空間における新サービスを次々と発表している。Facebookは社名をMetaに変更した。GAFAMがメタバースに注目する理由をSNSの使用率などから解説し、健全なメタバースが普及しそうな国として日本に注目する理由を大胆に指摘する。

日本では、高齢旅行者の姿は一般的なものとなっているが、中国では高齢者が旅行をすることは少ないという。日本、中国、欧米における個人、家族、国家の関係性の違いなどから、日本が西洋型を目指したものの、中途半端な姿に終わってしまったことを指摘し、中国での姿から日本社会の不具合を問い直す方法を考える。

従前の外食産業では不可分とされたコンテンツ(C:料理)、ロケーション(L:店舗)、オペレーション(O:調理/給仕)のCLOは、コロナ禍で分離された。高級名店は高質冷凍食品へ進出し、フードデリバリーは一般的なものとなった。そして、コロナ禍で分離化されたCLOは、更なる進化を遂げようとしている。コンサルタントとして活躍する筆者が、外食産業におけるCLO分離の様子を具体的な企業名とともに解説し、外食産業全体のビジネスモデル変革の重要性を指摘する。

コロナ第7波が落ち着き、政府は「全国旅行支援」をスタートさせた。コロナ禍で雌伏を余儀なくされていたサービス業に、ようやく一筋の光が射す。事業家には、評論ではなく「再起」のための戦略が求められる。サービス業の生産性改善策として「差別価格」などの概念を紹介するとともに、サービス業経営者に求められるマインドセットを解説する。

ウェブ上での購買や閲覧の履歴など個人情報の取り扱いが、個人情報の帰属や産業の競争政策などの点で論争となっている。個人情報に関する各国の対応の違いを紹介するとともに、第三者に個人データを預託する「情報銀行」という日本独自のコンセプトの仕組みや今後のポイントを解説する。

時代には光と影がある。今から振り返ると、昭和の金融は「影」ばかりが目立つが、ここではあえて昭和の金融が持っていた利点に焦点を当てる。意外なことに、社会的な情報コストという観点から考えると、利点は小さくない。銀行が融資を供与する際に発生する情報コストに注目し、昭和の金融と米シリコンバレーでの投資の間に見える相似形を明快に解説する。
