チームの生産性をあげるには、職場の問題を、個人の不平不満で終わらせずに「問題化」して共有するのがポイント。そのためには「数値化」が必要である。ベストセラー『職場の問題地図』の人気業務改善士が生産性アップのコツを伝授。新刊『チームの生産性をあげる。』から一部を紹介。
形容詞・副詞が出てきたら要注意
あいまい語を「数字」に変えて改善する
「この手のトラブルが『結構多い』んですよ」
「申請書の改善要望、『すごく』増えてきています」
私は、NTTデータでシステムのヘルプデスク・オペレーションデスクのサービスマネージャーをしていました。毎日、こんなコメントが現場のリーダーやスタッフからあがってきます。そんなときは必ずこう返しました。
「『結構多い』……どのくらいあるのか教えてもらえますか?」
そうすると、リーダーやメンバーは過去の対応履歴を調べて、同様のトラブルや要望の件数を教えてくれます(やがて、言われなくても件数を報告してくれるようになります)。
件数がわからないものについては、これを機に測定を開始するようにします。意識していないと測定できない。「形容詞」「副詞」チェックは、測定を始めるいい機会になります。測定値があれば、
「確かに、多い。これは改善しよう!」
「去年の3月も同じ傾向だったよね。これは季節的なものだから、様子を見よう」
「Webサイトの『よくあるお問い合わせ』に掲載して、利用者が問い合わせをしなくても解決できるようにしよう」
「あまり多くないよね。申し訳ないけれど、割り切って対応してもらえますか?」
このように改善の要否や方向性を判断することができます。モノによっては投資が発生したり、他部門との調整を要したりと、現場だけでは改善できないこともあります。
現場のマネージャーが上長や他部門の責任者に現状を説明し、改善を進めるには客観的なデータが必要です。数字は、何がムダで、何を改善すべきかを組織レベルで合意するための材料。あいまい語句は定義して、測定するよう習慣にしましょう。
以下、あいまい語句を含む、職場あるあるセンテンスです。こんな言葉が飛び交っていたら、要注意。数字に置き換えてみましょう。
「サーバーがしょっちゅう止まる」
「たびたびクレームをいただく」
「毎度毎度、帳票を探すのにすごく時間がかかる」
「わりと良く見かける不具合」
「承認されるまでに、えらく時間がかかるようになった」
問題を、一個人の単なる不平不満に終わらせず、問題化するためには客観的な根拠が必要です。万人、とまではいかなくても、組織の大多数に「これは問題だ」と思ってもらわなくてはなりません。数値化を心がけましょう。
(この原稿は書籍『チームの生産性をあげる。――業務改善士が教える68の具体策』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)