なぜ仕事の生産性があがらないのか? いろいろと工夫しているのに、なぜうまく改善できないのか。働き方を変えるには、まず問題を「問題化」してチームで把握することが肝心。そのためのフレームワークを、ベストセラー『職場の問題地図』の人気業務改善士が教える。新刊『チームの生産性をあげる。』から一部を紹介。

問題の原因にアタリをつける
5つの要素に分解すると問題点が見えてくる

「この仕事、問題だらけです」「効率悪いですよね、改善しましょうよ」

 そう思っていても、なかなか改善につながらないもの。問題を問題化するには、その業務の問題点を視覚化して、チームで意識を合わせる必要があります。そのためには、なんらかのフレームワーク(枠組み)が必要。問題を問題化するための最もシンプルなフレームワーク=「5つの要素」を紹介します。

 どんな業務も、次の5つの要素に分解することができます。業務がうまく回っていない、効率が悪い、生産性が低いとは、この5つのどこかに異常や不都合がある状態を言います。

(1)インプット
(2)アウトプット(成果物または完了状態)
(3)目的・目標
(4)関係者
(5)効率

 たとえば、あなたがパン工場を運営しているとします。パンを作る業務とは、小麦粉やタマゴや水などの原材料、すなわち「(1)インプット」を、焼きあがったパンという「(2)アウトプット」に変える一連のプロセスです。

「(4)関係者」とは? その業務を遂行するために、直接的または間接的に関わる人たちを言います。たとえば、インプット(原材料)を提供する業者や農家。パンを作るラインの作業者、設備の保守業者、品質管理部門……プロセスそのものに関わる人も重要な関係者です。そして、アウトプットを受ける人。配送業者、販売店の店長やスタッフ、さらには食卓でパンを食べるお客さんも関係者です。

 ここで言う「(5)効率」とは? たとえば、時間当たりの生産量、歩留まり(不良率)、作業者1人当たりの生産量、作業者の数、作業者の残業時間……など、さまざま考えられます。これらの要素も、業務一覧に追加して書き出してみましょう。なお、「業務一覧」とは、あなたのチームで持っている業務をリスト化した一覧表です。Excelで構いません。業務を見える化するためには、まずざっくり全体像を洗い出す必要があります(詳しくは第3回参照)。

 忘れてはいけない、「(3)目的・目標」の確認。どんな仕事にも目的や目標があります。たとえばパン工場なら、「国産の材料を使ったヘルシーなパンを生産する」などのポリシーなり目的を掲げているでしょう。「糖分○%」など具体的な数値目標もあるかもしれません。

 目的(または目標)の確認は重要です。なぜなら、その業務において何が問題で、何が問題でないかを決める基準になるからです。国産の材料を使ったヘルシーなパンを生産すると約束しているのに、外国産の小麦粉が紛れ込んでしまったら問題です。しかし、そのような目的を設定していなければ、特段問題にはならないでしょう。

 何が問題で、何が問題でないか、組織内での意識を合わせる。そのためにも、業務の目的の定義・確認は必須です。