歯医者を後にした香奈さん。

 実は10年ほど前にも一度、顎関節症の治療を勧められたことがあったが、健康な歯も削ると聞いて断った。

 重くなったり軽くなったりに多少の波はあるが、基本、顎の関節が痛くて口を開けづらい、あくびをするとカクカク音がするなどの不快な症状がなくならない。時には動かさなくてもズキズキ痛んだりもする。

「…それでね、一回治療を受けてみようと思うんだけど」

 子どもを保育園に迎えに行った帰り、数人のママ友に相談すると「私も顎関節症なの」と、なんと4人中3人が手を挙げた。悩んでいる人は多いのだ。

「だけど、噛み合わせの調整って、治療にはほとんど関係ないんだって。顎関節学会の診療ガイドラインに書いてあるわよ」

 1人のママ友が教えてくれた。

日本顎関節学会は
「咬合調整」を推奨しない

 香奈さんはさっそく、日本顎関節学会が製作した「顎関節症患者のための 初期治療ガイドライン」にアクセスしてみた。

 するとトップページにすぐ、知りたかった質問が登場した。

 Q1:「顎関節症だから、歯を削って調整します」それって、有効?

 答えはノーである。

『いきなり歯を削るかみ合わせの調整を受けるのは、できるだけ避けましょう。
 (GRADE 1D:強い推奨 /" 非常に低"の質のエビデンス)。
 顎関節症患者において、症状改善を目的とした咬合調整は行わないことを推奨する。
 (「顎関節症患者のための 初期治療ガイドライン」より抜粋)』

「エビデンス」とは「根拠」という意味。顎関節症の改善に、噛み合わせの調整が「有効」という根拠はほぼないという。