3年前、夫に先立たれたA子さん(70歳)は、首都圏郊外の一戸建てでひとり暮らしをしている。住宅ローンはとうに完済し、子ども2人も独立。それぞれに所帯を持っている。A子さんは、時々パートに出ながら、夫の遺族年金と預貯金で不自由のない暮らしを送っている。

 そんなA子さんのもとに、先日、生命保険会社から「満期のお知らせ」が届いた。A子さんが加入していたのは30年前に加入した養老保険で、予定利率の高い「お宝保険」と呼ばれるものだ。

30年満期を迎えた
予定利率6%のお宝保険

 民間の生命保険会社では、契約者から集めた保険料を保険金支払いのための責任準備金として積み立てて、債券市場などで運用している。その運用益を見込んで、あらかじめ保険料から割り引いておくのが予定利率だ。

 予定利率が高いほど保険料の割引率も高く、保険料は安くなる。反対に予定利率が低いと割引率は低くなり、保険料は割高になる。

 マイナス金利の影響もあり、2017年4月以降の予定利率は0.85%程度まで下がっている。いまや、保険を貯蓄代わりにするのは難しいが、A子さんが養老保険に加入した1987年は日本中がバブル景気に沸いていた頃だ。

 当時、保険会社が約束した予定利率は6.0%。満期まで契約を続けると、払い込んだ保険料総額より2倍程度の満期金が受け取れる養老保険や終身保険がバンバン売り出されていた。

 その後、バブル崩壊で運用環境が悪化。有利なお宝保険は、保険会社にとっては逆ザヤを発生させるお荷物となる。この逆ザヤを解消するため、90年代後半から2000年代前半にかけて行われたのが、予定利率の低い新しい保険への転換キャンペーンだ。「保険の見直し」という名のもとにお宝保険を中途解約させたのだ。