吾輩は猫である。しかも、働く猫。バカ言うな、と思うかも知れないが、いたって真面目だ。職業はタレント。CMに出ているスター犬のように有名じゃないが、自分の食い扶持くらいは稼いでいる。
ゆえに、この企画に登場する資格はあるって訳だ。
猫タレント界にも格差あり!
「スター」は24時間監視付き、保険にも加入
「この子がまいけるで、あれがらんち、その小さいのがもなかで、その横がさくら、それとさすけ、きなこ、たま、ひかる……」
これ、この家の娘さん。吾輩は「ようこさん」(35歳)と呼んでいる。2DKのマンションで、母親と二人暮らしをしている。
ようこさんが紹介している仲間は吾輩も入れて9匹。茶トラにキジトラ、黒猫に白猫、グレーっぽい猫もいる。みな雑種、もといMIX猫である。
「ワン!」
一応、ほかに犬も1匹いる。
「みんなタレントなんですか?」
「ええ。だけど、ごくふつうのイエネコです」
わかりにくいので補足すると、「スター」は自宅ではなく、プロダクションで飼われていることが多い。誘拐される恐れもあるため、24時間、付き人のような監視役も付く。怪我をしないよう保険に入り、同業他社のCMに出てはいけないなど厳しい制約もある。
そんなスターに比べると、この家の猫たちは自由だ。仕事がなければ、日がな一日のんびりと自宅でくつろげるし、仲間とも遊べる。仕事がある日も、ついてくるのは飼い主だけだ。
たまに、その飼い主の友だちが現場にきて携帯電話のカメラでバシバシ写真を撮りまくるのは恥ずかしいが、悪い気はしない。吾輩は彼女のことを密かに「ステージママ」と呼んでいる。
今回の取材も、きっとこのステージママがしかけたに違いない。
「ところで、この子たちのギャラはおいくらなんでしょう?」