スマホ決済が生活の前提
それ故に整った近代的なインフラ

 深センでは図書館での本の貸し借り、自販機での缶ジュースの購入、ストリートミュージシャンへの支払い、SUICAのようなICカードへのチャージなど、あらゆるところでスマホでのQRコードによる支払い、スマホ決済が使用されている。深セン在住の複数の友人から「サイフを持たずに出かけることはよくある」と言われるし、僕も2週間ほど滞在して現金の出番はホテルのデポジットだけ、ということが珍しくない。

 電子決済で最大手のAliPay(支付宝)のユーザーは4.5億人、一日あたりの決済トランザクションは1.75億回。AliPayとシェアを争うWeChat Payment(微信支付)のユーザは2億人、一日あたりの決済トランザクションは5億回にのぼる。(AliPay、WeChat Paymentの数値はCraig Smith氏の2017年2月のAlipayについてのレポート2017年4月のWeChatについてのレポートによる)

 深センではスマホ決済が生活の前提になるほど普及し、それと同時に日本では珍しくない近代的なインフラがはじめて普及し始めている。日本では50年前には普及していたものでも、2017年の技術でゼロからつくると別物になっていることはよくあり、見慣れたサービスが電子決済前提の新しい形になっているものを見かける。たとえば自動販売機だ。

 日本は一人あたり自販機の台数が世界一の自動販売機大国で、海外で日本並みに缶ジュースの自販機を見かける国はない。深センもほんの2~3年前はほとんど自販機を見かけなかったが、最近は新しい地下鉄の駅などに缶ジュースの自販機が一気に置かれるようになってきている。この3年で何が変わったのか。

 缶ジュースの購入に使うような数十円単位の低額紙幣は、中国では汚れていたり破れていることが多く、自販機の認識率がきわめて悪い。硬貨は1元以下のものが多く、3~7元(1元16円として48~112円)のジュース代を硬貨で投入するのは大変だ。「昔は缶ジュースの自販機を設置したら翌日にはなくなっていた」と言われる治安の問題や故障の問題もあった。