古から今も変わらず慣習、習慣を受け継ぎながら、流々とした時を刻む町京都祇園。時代を超えて私たち日本人の心を惹きつける「粋の文化」を祇園に入り浸る著者が「かっこいいおとな」になるために紡ぐエッセイ。第7回は、祇園祭の楽しみについてお届けいたします。(作家 徳力龍之介)
数十万人が集まる祇園祭
7月1日から祇園祭が始まります。繁華街の彼方此方から祇園囃子が聞こえ、街はお祭りムードを醸し出してきます。祇園祭というと、テレビなどで放映される鉾と言われる車を引いて、市中を優雅に進む17日の風景が一般的ですが、実は1日から神事が始まっています。
丸一か月の間に神事、行事がしっかりとあり、疫病退散と平安を願うのです。鉾が集まる辺りは昼夜とも人でごった返し、とくに宵山と言われる鉾の巡行前夜はメインストリートが歩行者専用になり、数十万人がひしめき合うという事態に驚きます。
ところが八坂神社に向かって右側にある祇園町辺りでは、普段とは趣きが変わり、意外とひっそりとしています。宵山と言われる16日の夜、市中は混雑で歩けないほどですが、祇園町辺りは日本家屋が立ち並んでいるために、一歩入れば通りは暗く見え、あまり人目を引かないのでしょうか、それとも寄せ付けない何かを感じさせるのでしょうか。