もう1つは、事前にエレベーターの状況を把握しておくことにより、作業員が保守に行ったときに、とりかかる作業の優先順位が前もってわかるため、短時間で効率的に作業を進めることができる。これは建機にGPSとセンサーを搭載したコマツのKOMTRAXと同じような効果をもたらしている。

フラグシップ効果は
新興国では圧倒的に有利

 香港では、第三者機関により、エレベーターの保守ビジネスにレーティングがなされている。それは故障の頻度だけでなく、修理に駆けつけるまでの時間なども評価対象となっている。

 しかし日本には、こうした認証はない。「エレベーターは品質が良くて当り前」と考えられる文化だからかもしれないが、国産大手3社の間では、品質で差別化を図るのは難しいレベルにある。

 三菱電機は1935年、日本で初めてエレベーターを発売し、見える形で技術的フラグシップを目指してきた。1993年に横浜ランドマークタワーに設置したエレベーターでは、高速でも床に立てたコインが倒れないという快適性をアピールした。また最近では、営業運転速度で世界最速(時速73.8km)のエレベーターを上海のビルに設置したが、これは乗客を速く運ぶということ以上に、フラグシップ効果が大きいという。

 エスカレーターでも、世界で初めて螺旋型のエスカレーターを実用化し、横浜ランドマークタワーなどに設置した。螺旋型のエスカレーターは、はるか昔の1900年頃に米国メーカーが試みたが、失敗していた。開発・製造・据付のいずれの段階にも非常に高度な技術的な課題があることから、これも同社の技術的優位性をアピールするものになった。

 こうしたフラグシップを握ることは、特にアジア・アセアンのマーケットでは、「三菱製のエレベーターを設置していること」がマンションの価値を高める効果があり、パンフレットに記載されていることからも、販促の上で大きな意味を持っている。

 ちなみに、エレベーター、エスカレーターにおいてブランド名は、施主が認めた場合のみ表示が許される。

見えないハイテクが
快適性とコスト削減を実現

 エレベーターは、ただ上下する乗り物ではない。住む人、働く人に快適に移動してもらうための“黒子”の役割もある。

 三菱電機が足もとで進めているエレベーター行先予報システムは、エレベーターに乗り込む前に行先階を読み込むことで、複数のエレベーターの中で最適なエレベーターを案内し、最少の停止階で目的の階に行けるというものである。これによりエレベーターの行列が減り、混んでいるエレベーターの中で利用者が階数ボタンを押す必要もなくなり、早く目的階に着くことができ、かつ省エネルギーも図られる。