その問題意識を持ってはいるが、それを本気で考えていない者が安易に行うのが、いわゆる「自分探し」だ。自分探しをする人が目指しているのは、「自分がどんなポテンシャルを持っているか、あるいは自分にとって本当の価値とは何かを、環境を変えることで知る」ことだ。環境を変えるために、世界中を貧乏旅行してみたり、さまざまなアルバイトに精を出したりする。

「自分探し」2つの間違い
“どう変わりたいか”が欠けている

 そこには2つ間違いがある。1つは「自分のポテンシャルや価値」といったときに、「自分」とは何かを全く考えていないことだ。

 本来、その「自分」は現在の自己ではなく、自分が目指す自己(理想自己)であるべきだ。自分がなりたいと思う自己が持つポテンシャル、例えば、欧州でプロのサッカー選手(理想自己)になって、クリスティアーノ・ロナウドみたいなストライカー(ポテンシャル)になりたい、というべきなのだ。自分探しをしようと思う程度の「今の自己」が持つポテンシャルなど、取るに足りないと知るべきである。

 もう1つの間違いは「自分」が静的で、変わらず、安定した存在と思っていることだ。理想自己を想定した時、人は現在の自己との差を知ることになる。すると、今の自分に欠けているものは何かを分析することができる。そしてそれを克服する過程を経て、理想自己に近づくことができる。つまり自己は、変えねばならないものだ。今の自分を変えることなく「自分に合った環境」を探すことは、言い換えれば「楽したい」と同じなのである。

 つまり、今日本人が「幸せな生き方」を知るためには、「自分はどうなりたいか」を知ることが必要だ。それは「いい結婚相手を見つけたい」ではない。「いい結婚相手に求婚されるような自分になりたい」でなくてはならない。

 個人の中の働き方改革は、自分をどんなふうに変えたいか、どんな自分になりたいかを真剣に考えることから始まると筆者は考えている。

 日々の生活の中では、自分は自分のことを見ていない。見ていると思っていても見ていないのが実情だ。なので「どんな自分になりたいか」がわかっているつもりで、わかっていない。