18歳で家を出れば、まず住む所を見つけなければならない。どこの国でも18歳で稼げるお金はたかが知れている。勢いルームシェアを行うことになる。ルームシェアを行えば、世の中の男女はほぼ同数だから異性とのつきあい方も自然と身につくようになる。英国のウィリアム王子とキャサリン妃がルームシェアで愛を育んだことはまだ記憶に新しい。何よりも家を出ればまず自分で食べていく必要がある。お腹がすけば職業を選り好みする余裕はなくなり、必死で仕事を探すようになる。

 このように考えてみれば、フリーターや婚活という人間の歴史上かなり特異な最近のわが国の現象は、動物として不自然な営為を積み重ねていることの必然的な結果ではないかと思えてならない。

 個人的には18歳もしくは21歳、すなわち大学に入学するかもしくは大学を卒業した時点を基準として、子どもと一緒に住んでいる親には、所得税を3倍~5倍程度重加算してはどうかと考える。要するに成人した子どもを家から追い出すインセンティブを仕組み化するのである。動物として不自然な営為を長く継続していると、子どもも親も駄目になってしまうのではないか。家を追い出されればフリーターでは食ってはいかれない。若者を家から追い出すことが、フリーター(=低所得者)を減少させる(若い世代の所得を向上させる)一番の早道ではないだろうか。

安易に雇用を企業に義務づければ、
長期的には雇用機会が減少するのではないか

「若者の安定的雇用の確保」と言えば、わが国ではおうむ返しのように「企業に若者の安定的な雇用を義務づけたらどうか」といった答えが返ってくる。何も若者に限らない。高齢者の雇用についてもまったく同様で、「希望者には65歳までの雇用を義務づけるべき」といった報告書がすぐに出たりする(厚生労働省「今後の高齢者雇用に関する研究会」報告書2011年6月20日)。

 しかし、このようなやり方は、わが国企業の国際競争力を弱めるだけではないか。90年代初頭までの時代、すなわちわが国の国際競争力が世界一の時代であれば、多少の無理強いを企業に課すことはそれなりの合理性があったかも知れない。しかし、現時点では、わが国の国際競争力は20位後半に沈んだままである。

 このような惨状の中で、企業に若者や高齢者の雇用を義務づけたらどうなるのか。結果的にわが国企業の国際競争力がさらに低下し、長期的に見れば雇用機会がさらに減少することは目に見えているではないか。それでなくてもわが国ではレイオフ(自由な解雇)が極めてやりにくい制度が確立されているのだ。長期的に若者の雇用を増やすためには1940年体制の下で半世紀以上も生き長らえてきたわが国の労働慣行そのものをむしろ打破すべきではないのだろうか。