部下と上司とで
同じ方向に進んでいくための合図
『ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法』
本間 浩輔 (著) ダイヤモンド社刊 1944円
本間 浩輔 (著) ダイヤモンド社刊 1944円
しかし一方で、プロセスを充実させるためにテーマとゴールの設定が使えると考えてみるのはどうでしょうか。
最初に決めたテーマ&ゴールは、あくまでその道程において実りある内省を引き出すための道具として使用するという考え方です。1on1の場合、その場で意思決定をすることが第一の目的ではありません。振り返って深く内省し、そこから教訓を引き出すことが優先事項です。
記憶を振り返ってあれこれ考えながら話していると、「あれ、もともと何の話をしてたんでしたっけ?」というセリフは、普段の会話でもよく耳にします。これが飲み屋で仲間と談笑しているときなら笑って流してもかまいません。しかし、1on1では深く内省するために一つのことに集中して考える機会が必要になります。ですから放置できないのです。
話し手に生じるこのような性質に対して、聞いているほうまで「なんだったっけ?」となるようでは困るわけです。まさに聞き役の出番がそこにあります。
聞き役である上司がすかさず「今日、話したかったのは……」と素早く介入できるように、最初に部下上司で握っておくことが大事なのです。つまり、1on1におけるテーマとゴールの設定は、部下と上司とで同じ方向に進んでいくための合図のようなものになります。
上司から「そういえば、今日は○○について話したかったんですよね」と聞き直すこともできますし、部下が「話題がそれちゃったので戻しますね」と一言で元の道筋に戻すこともできます。
最初に合意しているからこそ、一瞬で帰ってこられるというわけです。結果として、部下は話したいテーマについてたくさん話すことができ、さらにその結果として、短時間ながら頭の中の整理に役立つ可能性を高めることになります。