品格のある商店街に
あふれる中国人観光客

 銀座について、私はずっと「品格のある商店街」との認識だった。

 1990年代の初め、銀座への出店を狙っていた「洋服の青山」は、銀座商店街の顰蹙を買ってしまった。品格のない看板と外装、「いつも半額セール」といった販売手法が、銀座という街のアイデンティティや品格を著しく落としてしまうからだと言われたのだ。それくらい、銀座の“格”は高かったのだ。

 しかし、そうした銀座も、日本経済が長期にわたって低迷した影響で、すっかりパワーを失っていた。銀座のデパートもしかり。そんなデパートに“神風”が吹いたのは、インバウンドだった。中国人観光客を始めとした外国人観光客が急増、旺盛なショッピング意欲は銀座にとって“救世主”となった。

 ところが、中国の南方を襲う洪水のように流れ込んできた観光客は、銀座の収容力をあっけなくオーバーし、街の雰囲気を一変させてしまった。

 午後、遅めの時間に銀座に着いた私の目に入ったのは、すでに買い物を済ませ、大型バスが来るのを待っていた中国人たちの姿だった。バスがなかなか来ない上に、買い物に疲れたせいもあって道路の縁石をベンチ代わりにし、みんな歩道に座り込んでいた。

 大群衆が、銀座の縁石に座り込んでいろいろな方言で熱心にしゃべっているこの光景に、中国人の私もすっかり圧倒された。品格のある銀座はもう完全に“消滅”し、中国の地方の町のような雰囲気さえ漂っていた。目の前に広がるこうした光景に、私はただただ開いた口が塞がらなかった。ビジネスのチャンスをもたらしてくれた観光客をどう導き、過ごしてもらうのか、銀座の新しい課題だと感じた。