誰かを支えるために頑張っている人は黙って傷ついている

 こうした葛藤は、かねてからどんな職場でもありました。最も話題になる例で言えば同じ職場に子育て中の女性がいるケースです。

 女性たちには「子育て支援」という名の支援が与えられます。短時間労働をはじめとする制度的な支援だけでなく、周囲も丁寧に気を使います。

 言うまでもなく、仕事と育児を両立させるのはたいへんな労力です。それを支援する制度や周囲の理解は、あって然るべきです。

 その大前提に立ったうえで言うと、一方で、そのしわ寄せが子育てをしていない女性に向かっている現実があります。

「あなたには時間があるでしょう。あの人はいま子育てでたいへんなんだから、わかってあげなさい」

 もちろん、支える側の女性も「子育てはたいへんだ、頑張ってほしい」という思いを抱いています。しかし、負担を強いられている自分をまったく評価してくれない上司からの言葉に、とても傷ついている人もいます。

 ただ、その不満を口にしてしまうと、周囲に妬んだり恨んだりしていると思われてしまいます。そうした事態を避けるには、こころのなかで抑え込むしか方法はありません。誰にも言えないことによるストレスによってこころを引き裂かれ、病院に来られる方もいらっしゃるほどです。