日立製作所と三菱重工業が、経営統合に向けて協議を開始するというビッグニュースが流れた。現時点では、統合の形態ばかりでなく統合自体の成否も含めて、その行方は定まっていない。
しかし、両社の経営統合が実現すれば、日本の製造業にとって、画期的な出来事になることは間違いない。経営戦略に詳しい早稲田大学ビジネススクールの遠藤功教授は「重工、重電という業種や企業グループを越えた統合で、インパクトがある。いわばオールジャパン的な重電・重工メーカーの誕生で、総合力も生きる」と、ポジティブに評価する。
確かに、両社の統合は、大変に魅力的なものだ。もし両社が統合すれば、単純合算ながら、売上は12兆円強、営業利益5500億円の巨大企業が生まれる。売上では業界で世界トップの米ゼネラル・エレクトリック(GE)の1502億ドルにも匹敵する。しかも、ICT技術、エネルギー機器、産業機械、航空、鉄道、自動車機器などを有する、世界でも例を見ない重電・重機械分野のコングロマリットとなる。
潜在的な能力は
大きく高まる可能性
統合の狙いは、グローバル展開の強化、シェアアップ、人的資源の有効活用、シナジー効果、そしてリスク対応力の強化だろう。両社の潜在能力を考えると、M&Aの典型的なメリットを発揮できる可能性がある。
ここへきて日米欧の先進国経済は再び動揺の色を濃くしている一方、新興国の台頭は2008年のリーマンショック後に比べても、一段と明確になってきた。これに東日本大震災による福島第一原発事故が加わった。我が国はエネルギー政策の混迷で、国内での原子力発電の新設は困難な状況になった。経営環境は、一層、不透明、不安になりつつある。その意味では、事業の重複分野がそれほど大きくない両社の組み合わせは、事業分野の幅を広げリスク対応力を高める。