
セブン&アイの買収拒絶、日産の追浜工場閉鎖――。実績も抜群で「優秀な外国人社長」が、なぜ株価を下げてしまうのでしょうか。しかし、この一見不可解な現象の裏には、日本企業特有の“事情”と、彼らに課せられた“本当の役割”が隠されていました。なぜ彼らは株価を下げる選択をせざるを得なかったのか。その根深い内情に迫ります。(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博)
日産とセブン&アイ
企業価値は3割減
「大企業の社長の力量には3つのレベルがある」という話をします。
その前提の話から始めます。日産のエスピノーサ社長は主力工場だった神奈川県の追浜工場を閉鎖することを決めました。セブン&アイのデイカス社長はカナダ企業からの買収提案を跳ね除けました。
両社とも企業価値は下がり続けています。日産は前任の内田社長時代、ホンダ、三菱との3社統合が破談になる直前までの時価総額は1.6兆円台でした。破談の後に外国人社長にバトンタッチをしたのですが時価総額は1.1兆円〜1.4兆円台まで低下。追浜工場閉鎖を発表した後は一時1.1兆円台と3割超も企業価値を下げました。
セブン&アイはカナダのアリマンタシォン・クシュタールからの買収提案が明らかになった直後に時価総額が7兆円まで跳ね上がったのですが、その後、一貫して経営陣は買収阻止に動きます。約1年の交渉後、買収提案は撤回されました。企業防衛という視点では成功したものの、買収期待が消えたことで時価総額はピーク時から▲2兆円と3割近くも減少しました。
日産の内田前社長からエスピノーサ社長へ、セブン&アイの井阪前社長からデイカス新社長へと体制が変わったことで、両者の経営力はよくなったのでしょうか?それとも悪い影響が生まれるのでしょうか?社長の力量とは何なのでしょうか?
さて、そこで本題です。日本が誇るグローバル企業でも「社長の力量」は辛口に評価すると「3つのレベル」あります。