小手先ではない、気持ち

 実は、T田副編集長と『自分を超える法』担当編集のI沼との不思議な会話を目撃したと、I泉編集局長も言っていた。以下は、T田が担当した新刊の装丁を見たI沼とのやり取りです。

I沼「T田さん、今回の装丁はキテますねぇ。すごくキテますよ」
T田「そうでしょ! キテるでしょ。でもI沼君の装丁もキテるよねぇ」

 このようなキャッチボールがしばらく続けられていたそうだが、この会話を聞いていたI泉編集局長は「僕には何を言っているのかさっぱり分からないけど、二人の間では通じているんだよね(笑)」と首をかしげて笑っていた。

 上司のT田を身近で見ていると、小手先の伝え方以上に「こうしたい」という明確なメッセージを持つことのほうが大切なのかもしれないと思う。要は強い思いなのだ。

 例えば、寒風吹きすさぶ冬のシベリアにブリーフ一丁で放り出されたとしよう。通りがかった人に必死に話しかければ、言葉が通じなくても「ああ、こいつは寒いんだな。服がほしい、暖を取りたいんだな」と、ほぼ100%伝わると思う。伝える技術とは、つまり、必死さとも言える。それは、どんなメディアでも同じだろう。

 僕は必死になりたい。必死に仕事に取り組みたい。

「やっとムラタも分かってきたな」と、周囲に思ってもらえたとしたら、これが伝える技術である。大成功。

今週の気づきと来週以降へのテーマ
・伝えるとは、つまり「強い思い」
・書籍に必要なのは「4番級」のエピソード
・キテるは「持ってる」並みに一義ではない


(本連載は毎週水曜日更新です。伝わってはいけない思いだけが伝わることもありますよね。)