しかし、それでも物価上昇率2%の公約は実現できなかった。日銀は2016年1月29日、民間銀行の日銀当座預金にある超過準備に対して-0.1%のマイナス金利を課す「マイナス金利政策」の導入を柱とする追加金融緩和を決定した。しかし、その半年後の2016年8月に都銀の貸出残高が減少に転じる等、企業の資金需要拡大に繋がっていない。

「第二の矢」公共事業については、2013年度に、過去最大規模の100兆円を超える巨額の財政出動が断行された。国債発行額は、民主党政権時に財政ルールとして定められていた44兆円を大きく上回る49.5兆円に達した(2013.1.16付)。また、2014年度予算編成では、一般会計の総額は、過去最大の95兆8823億円に達した。歳出で最も大きい社会保障費は4.8%増の30.5兆円と、初めて30兆円を突破した(2013.12.27付)。

 一方、本格的な経済回復には、「第三の矢(成長戦略)」が重要なのだが、さまざまな業界の既得権を奪うことになる規制緩和や構造改革は、内閣支持率低下に直結するので、安倍首相にとってはできるだけ先送りしたいものとなった。それ以前に、安倍政権が「成長戦略」と考えた数々の政策は、多かれ少なかれ、今までの政権でも検討されてきたものだ。端的にいえば、従来型の「日本企業の競争力強化策」で、基本的に誰も反対しない政策案の羅列でしかない(2013.1.30付)。あまり効果が出ないのも無理はない。

第三の矢・成長戦略も
支持率維持の道具でしかなかった

 それ以上に問題なのは、安倍政権が成長戦略を「支持率維持の道具」ぐらいにしか考えていないことである。成長戦略を担当する経済産業相に起用された世耕弘成氏は、初入閣で、成長戦略のかじ取りをするには経験不足だ。だが、小泉純一郎政権期から長きにわたって、自民党の広報戦略を担ってきた人物であり、成長戦略を「支持率調整」に使いたい首相の意図だけはよくわかる(2016.8.9付)。

 また、「働き方改革担当相」「一億総活躍担当相」を加藤勝信一億層活躍相が兼務している。加藤氏はそれ以外にも、「女性活躍担当相」「再チャレンジ担当相」「拉致問題担当相」「国土強靱化担当相」「内閣府特命担当相(少子化対策男女共同参画)」を兼務している。まるで一貫性のなさそうなこれらの業務だが、「国民の支持を受けやすい課題」という共通点がある。つまり、加藤氏は事実上「支持率調整担当相」であり、首相官邸に陣取って、支持率が下がりそうになったらタイミングよく国民に受ける政治課題を出していくのが真の役割なのだ(2016.1.5付)。