突然の体調変化で朝起きると嘔吐
「収入認定」による人生のつまずき

 重く固い表情、顔を伏せたまま口を開けずにいるアスカさんの横で、母・ミサトさんがアスカさんの高校生活について語り始めた。

 2014年4月、母娘に対して、高校に進学したばかりのアスカさんの給付型奨学金が収入認定されることが告げられた。アスカさんは「は? なんなの?」と怒ったという。

 翌月の5月から、アスカさんの体調に変化が現れた。朝、起きると嘔吐。学校でも嘔吐。しかし内科的な疾患はなかった。結局、ミサトさんが現在も通い続けている心療内科で、アスカさんは「身体化障害」という診断を受けた。ストレスによる身体の変調だ。ついでアスカさんは「人と接するのが怖い」と言い始めたという。

「中学までは特に問題はなく、お友達ともお付き合いできていました。『なんで? 急にどうしたんだろう?』と思いました。ただ、理由は……なんとも言えません。高校に進学して環境が変わったせいなのか、専門家としての将来や進学を目指しているクラスメートたちに囲まれてなんとなく居づらかったのか」(ミサトさん)

 高校生活と次の進路を考えるにあたっては、今日も明日も明後日も来週も来月も、進学や就職が具体的な課題となる近未来も、高校での学校生活と家庭生活が大きな問題なく営めるという前提が必要だ。周囲のクラスメートのほとんどが、その前提を疑わずにいられる中で、せっかく努力によって獲得した給付型奨学金を使えなくなったアスカさんにとって、高校の教室の風景や同級生たちの笑顔は、どのようなものであっただろうか。

 クラスメートにとって重要な「当たり前」が、クラスメートと同じ制服を着て同じ教室で同じように学んでいるアスカさんには「当たり前」でない。しかも、アスカさんが努力によって獲得した給付型奨学金があれば、まだ「当たり前」に近い状況でいられたはずなのだ。

「アスカの具合が悪くなったのは、収入認定された直後でした。言われてみると、少なからず影響はあったのかなあ? と思います。やはり、やる気をなくしている状態でした。高校の次を目指してテンションが高くなっている同級生たちの中に、アスカが1人だけいれば、浮くような感じになってしまうでしょうし」(ミサトさん)