複利で運用するより
積立額を増やす方がマシ

 では、なぜ金融機関や運用会社は盛んに「積立投資で3%複利の魅力」みたいな喧伝をするのだろうか。

 こう言ってしまうと身も蓋もないのだが、資産形成の成否を決める最大の要素は運用ではなく、「働いて稼いだお金をいかにたくさん貯めるか」というところにある。つまり、毎月の積立額を増やせば、複利運用による増加など取るに足らないものになってしまうというわけだ。

 例えば、前述の例のように毎月2万円ずつ、20年間積み立てて3%で複利運用する場合、元利合計金額は657万円となるわけだが、積み立ての金額を3万円にしたら、たとえ運用による利益がゼロであっても、積み立て元利合計金額は720万円となる。

 もちろん積み立ての金額が1.5倍になっているのだから、こんなことは算数以前の話で当たり前のことである。つまりここで言いたいのは、運用に頼るよりも、もう少し頑張って余計に働くか、支出の無駄をなくして、1万円でも余計に貯める方が確実にいい結果になるということだ。

 ところが、人間はそれほど意思の強い生き物ではないので、使うお金を減らして貯蓄を増やすといったことは簡単にはできない。そこで金融機関や運用会社は、そうした人の心に上手に付け入り、「月々わずかな金額を積み立てれば、複利になると効果を発揮しますよ」というセールストークを使うのだ。

 筆者は、投資をすることが悪いとは決して思っていない。むしろ適切な方法で、少額でもいいから長期にわたって投資して資産形成するのは良いことだ。しかし、不確実な「複利のマジック」に決して惑わされてはいけないのである。

(経済コラムニスト 大江英樹)