民主党が政権を獲得した場合、それが実効性のある政権になるかどうかを占う上で、重要な試金石になると思われる政策がある。それは民主党が教育改革の一環として導入を主張している「学校理事会」という制度だ。
民主党のマニフェストには「公立小中学校は、保護者、地域住民、学校関係者、教育専門家等が参画する『学校理事会』が運営することにより、保護者と学校と地域の信頼関係を深める。」としか書かれていないので、これがそれほど重大な政策のようには思われていなくても不思議はない。しかし、どうしてどうして、この学校理事会こそ、民主党政権のテーマが満載された象徴的な政策と言っても過言ではない。
なぜならば、民主党の考える学校理事会制度とは、中央官庁の権益を丸ごと引き剥がし(既得権益の剥奪と霞が関の改革)、それを地方に移譲し(地方分権)、地域が独自の判断で学校を運営できるようにする(フェアネス)と同時に、地域の住民を巻き込んで(市民参加)、学校という公的な機関を運営していこうというものだからだ。
本連載の過去分をお読みいただければわかるように、既得権益の剥奪と霞が関の改革、地方分権、フェアネス、そして市民参加が、いずれも民主党の政策理念の要諦となっている。
しかし、逆の見方をすれば、もし既得権益を持つ勢力の抵抗に遭って学校理事会の政策を実現できないとなると、民主党政権はおそらく他の分野でも立ち行かなくなっている可能性が高いことになる。いや、そもそもこれを実現できないとなると、民主党の政策理念自体が疑わしいものになってくる。一見地味ながら、それほどこの「学校理事会」は民主党政権にとってメルクマール的な意味を持つ政策と見られるのだ。
画期的な学校理事会の中身
この学校理事会という制度は、中身を見れば見るほど大変な制度だ。それがマニフェストから伝わってこないのが残念だが、もしかすると民主党の政策担当者たちは、前回紹介した「メディア政策」と同じように、抵抗勢力を刺激することを避けるために、あえてマニフェストにはそこまで書き込まなかったのかもしれない。