伊達さんが専門とする経営学、組織行動論の世界では、海外はそれなりに進んだ研究があるものの、日本ではまだ企業への研究適用の取り組みが浅い分野で、経営学の人的資源管理論で部分的に採用のことを扱っていても、採用に特化した研究はまだ少ないと説明を受けました。そのため、私たちのような企業が採用活動の中で伊達さんの研究テーマを実践するのは、まさにうってつけだったのです。 

 そうして、伊達さんに相談する中で、ある一人の人物の名前が挙がりました。神戸大学での研究室の同門で「日本の採用活動に科学を!」という野心あふれる若手研究者がいて、その人にもプロジェクトに加わってもらうのが良いのではないか、というのです。

 その人は現在、横浜国立大学大学院で教鞭を執られており、採用活動を科学的に検証する視点で書かれた『採用学』などの著書がある服部泰宏先生でした。とあるホテルのラウンジで伊達さん、服部先生、私の3人で、採用における課題とこれからの採用はどうあるべきかを熱く語り、採用に新しい風を吹かせるべく動き出そうと話し合いました。

 まだ「採用学」という言葉も生まれていない時でしたが、何かが大きく変わりそうな、そんな予感のする瞬間でもありました。そこから服部先生にもプロジェクトメンバーに加わってもらい、「多様性を測る」ことを目指した私たちは「科学的データに基づいた採用活動」のフェーズへと入っていったのでした。

 そうして考え出したのが、独自の採用手法として後に話題にもなった「カフェテリア採用」「おせんべい採用」などです。これにより、地方の一中小企業に過ぎなかった、知名度の低さから採用に苦労していた三幸製菓の採用活動は劇的な変化を迎えることになりました。次回詳しくお話しします。

(モザイクワーク代表取締役 杉浦二郎)