「母集団形成」に囚われると何が問題か
前回の記事は、筆者がエントリー数300程度という状況から、最大で1万3000超のエントリー数に到達するまでのプロセスをお伝えしました。
自社の「ポジショニング」を明確にし、「成長」というキーワードに絞り込んで学生に伝えることをフォーカスしたメッセージングを意識したこと、それにより募集増という成果を積み上げ、その事実をもとに経営陣に採用活動への理解を求めていったことで、3年間かけて数多くの学生からエントリーしてもらえるようになっていきました。
しかしながら、エントリー数を重視した活動を3年ほど続けるうちに、「母集団重視」の採用活動に疑問を抱くようになりました。1万人以上の学生からエントリーしてもらうことは大変有り難いことでしたが、選考プロセスへの負担が増すにつれて、「きちんと選考の質を担保できているのか?」と不安を覚えるようになったのです。
また、1万以上のエントリーの中から、わずか十数名を採用するということは、大量の応募者を「落とす」ことに労力を割く、ということです。コンシューマー製品を扱う会社として、大量の不合格通知を学生の方へ出すことへの葛藤と後ろめたさもありました。
意を決してエントリーしてきてくれた学生に対して、しっかりと向き合えているのかという気持ちが湧いてきたのと同時に、何よりこの非効率で生産性のない採用活動を変えなくてはいけない、という思いに至ったのです。
そこで私は、大量に集めることをやめ、母集団を減らす、という決断をしました。
採用責任者になって4年が経った2010年ごろ、インターネットの世界では、ソーシャルメディアの伸長が著しく、新たなコミュニケーション手段として、TwitterやFacebookが注目され始めていました。ソーシャルメディアの特徴は、マスメディアのように大多数に情報を伝えるということよりも、限られた人たちに対してインタラクティブなコミュニケーションが行えるということでした。
採用において、いたずらに母集団を拡大する(そもそも「母集団」という考え方が必要なのか? という)ことに疑問を持っていた私たち三幸製菓の採用担当者は、ソーシャルメディアの「相互交流ができる」という面に着目し、この新しいコミュニケーションツールにチャレンジしてみることにしたのです。