40歳・50歳・60歳から人生を一新! 資格&学歴 裏ワザ大全#11Photo:PIXTA

社会人の人気が高止まりするMBA。名門ビジネススクールの入試倍率は近年、4~5倍が常態化している。その一方で、私立大学の双璧、早慶では優勝劣敗が鮮明になり、その早稲田が2025年度入試から募集方式を大きく変えることを発表するなど、激変が予想される。特集『40歳・50歳・60歳から人生を一新! 資格&学歴 裏ワザ大全』の#11では、MBAホルダーを目指す社会人のために、その最新事情を詳らかにする。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)

社会人に人気の早稲田ビジネススクールが
2025年度入試からコース再編で社会人シフトへ

 コロナ禍を契機に人気が復活したといわれるMBA。だが、直近2024年度の入試(25年4月入学)では、その潮目が変わった。

 国内主要ビジネススクールの入試倍率を見ると、学部生からの進学者が多い「昼間主(全日制)」の方は軒並みダウンした一方で、社会人受験者が主体の「夜間主(パートタイム)」は、微減となった一橋大学大学院経営管理研究科経営管理専攻を除いて、ほぼ軒並み上昇する結果となったのだ。

「大卒就職の売り手市場を反映し、学部生の受験者が減る一方で、社会人の方ではスキルアップ、キャリアアップのための新たな選択肢としてのMBA人気が高止まりしている」と分析するのは、大学院受験・大学編入予備校、河合塾KALSの鄭龍権講師だ。

 その象徴といえるのが、国内初のビジネススクールのMBAコース、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS)の入試倍率で、21年度の4.73倍から24年度の2.49倍へと右肩下がりで急落した。

 一方、この間に入試倍率が急伸したのがKBSのライバルである早稲田大学大学院経営管理研究科(WBS)だ。「近年のMBA取得を目指す社会人の早稲田人気は、他のビジネススクールから頭一つ抜け出している」と鄭氏は言う。

 その理由は、KBSが昼間主なのに対して、WBSの方は社会人が集まりやすい夜間主コースも設置しているからというだけではない。KBSはブランド力と実力から、社会人が休職してでも入学する価値があるビジネススクールとして、長年位置付けられてきたからだ。

 KBSの入試倍率低下の理由の一つとして挙げられているのが、コロナ禍をきっかけとした早慶の入試戦略の違いだ。KBSはコロナ禍で中断していた筆記試験を23年度入試から復活させただけでなく、新たに大問で「数学」を出題してきたのだ。

「高校1年生レベルの問題だが、数学アレルギーがある文系出身の社会人から敬遠されることが多い。だが、データサイエンスなど数学力が前提となる科目を必修とするビジネススクールは多く、基礎的な数学ができないと入学後に苦しむことになる。その意味で、数学を出題するKBSの筆記試験は誠実といえる」と鄭氏。

 片や、同じくコロナ禍で筆記試験を中断し、一度は復活させたものの24年度から再び筆記試験をやめたWBSは、書類選考と面接だけで受験できるため、忙しい社会人には受験しやすい。とはいえ、「受けやすさ」と「受かりやすさ」は全く別問題。「WBSの入試では書類選考で7割の受験者が不合格になる上に選考基準が分かりにくく、対策が難しいため専願受験は危険」(鄭氏)という。

 社会人の取り込みで明暗が分かれた格好の早慶ビジネススクール。そして、25年度入試(26年4月入学)で、WBSがさらなる“攻勢”に出ることが判明し、その差は拡大するとみられている。昼間主、夜間主ともプログラム(コース)を大幅に再編し、社会人シフトを鮮明にするのだ。

次ページでは、早稲田ビジネススクールのプログラム(コース)改編の中身に加え、激変が予想される25年度入試に向けた受験校選びと併願術、さらにひそかに注目を集めている「MBA×中小企業診断士」の一挙両得ルートまで徹底解説する。MBA取得を目指す社会人は必見だ。