東日本大震災が発生してから、月1~2回のペースで被災地にボランティアに行っている。先日、陸前高田の仮設住宅を訪ねる機会があり、ひとり暮らしのおばあさんに津波から逃げ出したときの話を聞いていた。
「隣の人が、『ばあちゃん、津波だ!逃げるぞ!』って連れにきてくれて、その時、ちょうど足にバッグが引っかかったもんだから、そのバッグだけ持って逃げたんだわ。その中に“おくすり手帳”を入れていたから、避難所でも助かったのよ」
持病を抱えて薬を飲んでいても、自分が飲んでいる薬の名前を正確に言える人はなかなかいない。今回の震災ではおくすり手帳を持っていたおかげで、避難所などでもこれまで飲んでいた薬の情報を伝えられた被災者もいて、その存在が改めて見直されている。
飲み合わせをチェックして
副作用を防止するおくすり手帳
病院や調剤薬局に行ったとき、「おくすり手帳を持っていますか?」と聞かれたことはないだろうか。持病で薬を飲んでいても、「血圧の薬」「糖尿病の薬」「精神安定剤」など、一般的なことは分かっても、正確な薬の名称まで言える人は少ないだろう。おくすり手帳はこれまでに医療機関から処方された薬の情報を記録して持ち歩くための手帳で、自分がこれまでに飲んできた薬の内容を把握するのが目的だ。もともと一部の医療機関や調剤薬局で行われていた独自のサービスだったが、その効果が期待されて2000年からは国の制度になった。
病院や調剤薬局などでは、薬と一緒に、その薬の名称、飲み方や使い方、1回の用量、効果、副作用などが書かれた薬剤情報提供書も渡されることが多い。この説明書でも自分がどんな薬を飲んでいるのかは理解できる。しかし、おくすり手帳は、このときに処方された薬の情報だけではなく、これまでに処方された薬の情報を1冊の手帳にまとめて書き込んでいくものなので、「他の診療所で出された薬との飲み合わせは大丈夫か」「以前に飲んだ薬で副作用がでたものはないか」など薬の服用履歴も分かるのがメリットだ。