「各部門のエース級を出せ! そうでなけりゃ、本当に役立つシステムなんてできるはずがない!」

しかし、各部門長は口々に異を唱えました。

「そんな……。エース級を取られたら本業はどうなるんですか!」

ひと息ついたあと、社長は答えます。

会社の中長期的な利益を考えれば、このプロジェクトは立派な『本業』だ。だから、そのつもりで人を出せ。他のメンバーで補い合って、必要なら作業をアウトソーシングしたっていい。その費用がかかるなら、言ってくれれば出す」

そこまで言われれば、各部門長も従わざるを得ません。

そして各部門のエース級が集まり、しかもその多くが「専業」として参加したことでプロジェクトは順調に進み、コストもスケジュールも遵守する中、結果として、現場の要望に応え、会社に資する「本当に役に立つシステム」が完成したのです。

現業の体制を変えてでも、エース級をプロジェクトに参加させる。
そのために必要な費用は、長期的な視野に立てば会社のメリットにつながる。
そうしたことは、会社の経営に責任を持つ人間でないとできない指示です。

経営陣がこういうことを理解していないプロジェクトは、エンドユーザーとなる社員が十分に協力できないという制約の中で行われるので、失敗への道を突き進むことになりかねないのです。

『システムを「外注」するときに読む本』の第4章でも、発注者側の経営者が、正しくプロジェクトの意義と方向性を社員にメッセージングしなかったことで、現場のプロジェクトマネージャーが疲弊してプロジェクトが頓挫してしまい、そこからどうすれば成功へ導くことができるか。その一部始終を描いています。

ご自分の会社や業務にあてはめていただきながら、ぜひ、ご一読くださればと思います。