米国は唯一の超大国としての圧倒的力を背景に上から押さえつけるという態度をとりがちである。

 これは日本も経験済みだ。日米経済関係が最も厳しかった80年代後半に数々の日米経済摩擦案件についての交渉を行ったときの常だったが、「米国の市場を閉められたくないのであれば日本の市場開放をしろ」と要求を突き付け、自国企業の輸出努力の欠如などは一切問わず、議会の制裁決議などを背景に日本に譲歩を迫った。

 私は「脅迫の下で交渉はしない」と当時の通産省の幹部とともに交渉の場から引き揚げたことも多かった。しかし多くの場合に日本が妥協したのは米国に安全保障を依存する同盟国であったからである。

 しかし北朝鮮や中国はそうではない。

 北朝鮮は国際法に違反し、数々の安保理決議にも明白に違反し、核ミサイル開発を進めている訳であり、米国や日本が強硬な立場を貫くのは当然だろう。しかし、相手を締め上げて降参させることができればよいが、北朝鮮核問題の歴史はそれではうまくいかないことを示してきた。

 また、現時点の最大の目的はいかにして大きな犠牲なく北朝鮮の核・ミサイルの脅威を取り除くかということにあり、問題の本質は「交渉による解決」を可能にできるかということだ。

 北朝鮮は過去にロシア、中国、日本といった周辺大国に蹂躙されてきた歴史を持つ。強いもの、大きなもの、力による押しつけには強く反発をする。

 私が拉致被害者や核・ミサイル開発の問題で、北朝鮮との一年に及ぶ水面下の交渉で心がけてきたのもこの点だ。相手を脅すよりも信頼関係をつくることが交渉妥結の早道である。北朝鮮の米国に対する反発は異常なほど強いことは米国も理解するべきだ。

国内に「強さ」示すことが必要な金書記
シナリオ実現の実働部隊欠くトランプ大統領

 三つ目の理由は、金正恩第一書記にとり「強さ」を示すことが国内的に必須なことだ。

 北朝鮮は完璧な情報のコントロールを行うとともに、恐怖政治により国民の不満を抑え続けてきた。だが金日成から金正日、金正恩と三代続くに従い、カリスマ性は薄くなり、強権に依存する度合いも強くなってきた。

 いまだ指導者の地位に就いて日も浅く、十分な統治経験のない若き指導者として国内の権力基盤を固めるため自分の「強さ」を示すことに躍起となっている。核・ミサイル・対米関係・対中関係・対日関係で「強さ」を見せることが国内対策として必須と映っているのだろう。この点を顧みず国際社会が強気一辺倒で進むと、思わぬ北朝鮮の反応を引き起こす可能性がある。