昨今の世界経済の先行き不安も半分は2009年から想定された道筋だ。日本人なら金融危機後の欧米のバランスシート調整にはそうとう時間がかかると実感的に理解できるだろう。
今回、米英政策当局には1930年代の大恐慌や近年の日本を教訓とする知見があった。09年、彼らはたたみかけるように金融・財政政策を発動していったん恐慌を防ぎ、株式や新興国のリスク資産が反発した。10年、再びだれてくる経済を米国の政策当局はQE2とブッシュ減税の継続で押し返した。しかし11年に入って、政策の追加余地が尻すぼみになる一方で、バランスシート調整を脱する兆候はまだ見えない。
重要なのは、自律回復へのメドが立つまで、政策という添え木を継続するという意思の表明である。FRB(米連邦準備制度理事会)議長ら米金融当局はこの点を心得ている。しかし、愚直な健全主義に傾斜し、雑多な国々が混在する欧州は、域内債務問題での政策決定で毎度後手に回り、勇み足の利上げという逆噴射までした。バランスシート調整下の経済・市場はささいな政策対応の失敗で台なしになりかねない。この歴史の教訓を勘案するとき、欧州は常に禍根の種として気がかりだ。