残業をさせるには「三六協定」の届けが必要
協定がなければ、残業を拒否できる

 従業員に法定労働時間を超えて働いてもらうためには、事前に労働基準監督署(以降、「監督署」と略す場合も)に書面を届け出ておかなければなりません。書面には、従業員の過半数で組織する労働組合か、もしくは従業員の過半数を代表する者の署名が必要になります。管理監督職にある者は代表にはなれません。

 これが俗に言う「三六協定」(サブロク協定)です。なぜ「サブロク」なのかというと、労働基準法の36条にこのことが定められているからです。

 三六協定に明記する時間外労働には制限があります。1週間15時間、2週間27時間、1カ月45時間……といった具合です(厚生労働省告示)。三六協定を結ばず、協定書を監督署に届け出ていない場合(中小企業には少なくないようです)の残業命令は違法ですから、従業員は拒否できます。

 では、「三六協定を結んでいないから残業代は払わない」という会社側の“へ理屈”は成り立つでしょうか。

 もちろん、成り立ちません。実際に上司の指示で法定労働時間を超えて残業した事実があるなら、会社はその分の残業代を支払わなければなりません。

 ただ、三六協定書も提出しないで残業させているぐらいですから、争いになると「命令ではなく、本人の仕事が遅いから勝手にやっていただけ。上司は知らなかった」などと言い張るかもしれません。もちろん、これも通りません。

 時間外に働いたことの証明ができれば、未払いの割増賃金を取り戻せます。会社は、三六協定なしに残業させたことについて罰せられます。
 


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