一方のプロベンジは患者自身の免疫細胞を取り出し、攻撃目標とするがん細胞の「目印」を教え込んだ後に患者の体内に戻す方法。戻った免疫細胞は仲間を総動員して、目印を手がかりにがん細胞を攻撃する。効果は前述のとおりだが、いかんせん1回ごとにワクチンを製造する工程が必要であり、投薬関連だけで9万ドル以上の費用がかかる。さすがに普及するか危ぶむ声があったらしい。

 しかしこれは杞憂だった模様。というのも、この1年でベネフィットがリスクやコストを上回ると認められ、高齢者や身障者向け公的保険「メディケア」の支払い対象品目になりそうなのだ。開発製造元のDendreon社は製造能力を4倍にしてこれに備える。さらに今年の米国臨床腫瘍学会で、新たに三つの臨床試験の開始が発表された。うち一つはホルモン治療にも反応する進行前立腺がん初期の患者が対象。成功すれば前立腺がんの治療戦略をがらりと変えるかもしれない。ちなみに日本での承認申請は未定である。提携先を探しているとの話はあるのだが。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)