TOPSHOPのミラザ新宿店の店舗内

 英国を代表するファッションブランドのTOPSHOP(レディス)/TOPMAN(メンズ)の日本店舗が好調だ。

 通常、定価のままで販売した比率であるプロパー率は60%を超えていれば優秀とされるが、TOPSHOPは72.8%(前年比24.3ポイント増)、TOPMANは69.7%(9.5ポイント増)と非常に高い数値を記録し、収益に貢献した。値引きなしでも売れる秘密はどこにあるのか。

 同ブランドは日本で、ラフォーレ原宿店、ミラザ新宿店、大阪ルクア店、横浜みなとみらい店、札幌ステラプレイス店の5店舗を展開する。最新のモードも加味した、多品種少量の商品を販売するSPA(製造小売り)の一つだが、他のSPAとはややビジネスモデルが異なるのが特徴だ。

 一般的な欧米のSPAはマーケットイン型といって、可能な限り商品の売れ行きやマーケット動向をギリギリまで見極めて、最後の数週間で商品を企画・製造して販売する。しかしマーケット動向に沿った企画をするため、シーズン実需期になるとどのブランドも類似した商品を展開し、没個性化してしまう傾向がある。こうなると売り上げは伸びず、値引きして販売せざるをえなくなる。

 これに対して、TOPSHOPは基本的にはマーケットを追わず、企画を先行するプロダクトアウト型のビジネスを展開する。店頭展開の約半年前から、日本と英国で情報を共有して企画内容の検討をスタート。積極的に消費者に対してブランド独自の新しいスタイルを提案する。

 この手法は企画が外れた場合のリスクが大きい。そこでシーズン実需期に入る前に、先行して少量の商品を投入し、顧客の反応を見ながら最終的な品揃えを確定する。マーケットインの要素も取り入れて、商品を確定する。

 ブランド全体ではこうした仕組みが世界中に導入されていたが、ようやく日本でもマーケットの特性が把握できてきたため、売り上げ予測精度が向上し、プロパー率が改善された。また2011年春夏物から、円高を背景に価格を30%下げたことで、顧客数が大幅に伸びたことも追い風になったようだ。これで英国での価格に比べて1.1~1.3倍程度に収まり、値頃感が強まったという。

 品揃えにおいては、ワンシーズンを通じておいておく商品、4~8週間で入れ替える商品、あえて1~2週間で売切れてしまうトレンドラインなど、複数の商品ラインを用意し、常に新鮮な売り場作りを心がけている。

 今年度の日本での売上高は、昨年度の約1.5倍の30億円強を目指している。プロパー率が高いため、最終的に販売できた比率である消化率も97%と高くなった。

 運営会社の高橋秀樹T’s社長は、「一般的な欧米のSPAは同じような商品が並びがちであるのに対し、一味違ったブランド独自の新しいスタイルを示せたことで成功した」と力説している。

 ファッション業界では、全体的に売上高が伸び悩んでいるため、プロパー消化率を高めて利益を確保しようという動きが強まっている。ただし値引き販売を行わなければ商品の回転率が落ちる可能性もあり、緻密な販売計画が求められる。TOPSHOPのプロパー率の向上は注目される事例となりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 野口達也)

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