インターネットを通じてモバイルを狙う「脅威」が増大している。まだユーザーの多くは気づいていないが、モバイルのOSやアプリケーションを脅かすマルウェアの数は増大の一途を辿っているのが現状だ。今後、スマートフォンが大量普及するのに伴い、個人の端末を通して企業の機微情報が大量流出する恐れさえある。有効な対策はあるのか。マカフィー(日本法人)でコンシューマ事業を統括する田中辰夫・コンシューマ事業統括取締役 常務執行役員 事業本部長に、モバイルセキュリティの傾向と対策を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)
――スマートフォンをはじめ、モバイルのセキュリティ対策に注目が集まっている。マカフィーはいち早くモバイルセキュリティに取り組み始めた1社だ。そもそも、モバイルセキュリティとはどんな概念なのか。
PCの世界で言えば、インターネットを通じてOSやアプリケーションソフトの脆弱性を突かれたり、ウィルス入りのメールを送られたりといった被害が古くからあった。ひとたびマルウェアに侵されると、画面がブルースクリーンになって動かない、全く応答しない、メールを開いたら勝手に動き出した、リンクにアクセスしたらどんどんポップアップが出てくるなど、数々の異常が生じる。
スマートフォンなどのモバイルも、インターネットに自由にアクセスできる機器という意味では、PCと理屈は同じだ。これらの機器も、常にマルウェアの脅威に晒されている。
はっきり言えるのは、「モバイルだから安心」と言うわけではないということだ。これから、モバイルを狙うマルウェアは加速度的に増えていくだろう。
目に見える被害がないとわからない
スマホユーザーの油断を狙う「脅威」
――個人ユーザーにとっては、モバイルがそれほどの脅威に晒されている実感はまだ湧かない。スマートフォンが本格的な普及段階に入っているが、実際に脅威を認識している人は増えているだろうか。
脅威を認識しているスマートフォンユーザーは、まだほとんどいないのが現実だ。誰しもPCを買うときは、「アンチウィルスソフトを入れなければ」と思うものだが、モバイルに関してそういう感覚はあまりない。
その理由は、目に見える被害が広がっていないからだ。また、実際に被害に遭ったとしても、それを認識することができる場合とできない場合がある。