4月から、立命館大学政策科学部に准教授として赴任した。私の任務は講義・研究に加えて、英語のみによって学位のとれるコースの設置準備だ。それに関連して、今回は「若年層の就職難」の解決策として「大学の国際化」について論じる。
若年層の就職難は、
彼らの努力不足ではない
若年層の就職難は、彼らの努力不足とみなされることが多い。しかし実態は、90年代以降、バブル経済の崩壊とグローバリゼーションによる「失われた10年」と呼ばれる長期的な経済停滞に対して、国内の正社員の「長期雇用保障の慣行」を頑なに守ろうとしたことで起こっている。
「長期雇用保障の慣行」とは、一般的に「年功序列」「終身雇用」として知られるもので、新卒で正社員として就職できれば、定年近くまでの数十年間、失職しないシステムだ。しかし、「失われた10年」の時期、日本企業は国際競争力を維持するために多国籍化し、開発途上国の安いコストで生産する体制を作ったが、一方で国内の労働需要が激減した。
これに対して日本企業は、「慣行」に従って既存社員の雇用維持に努め、新規採用を抑制し、派遣や請負等の非正規雇用社員を増加させた。その結果、若年層の多くが新卒で正社員として採用されず非正社員となっているのだ。
そして、非正社員として社会人をスタートした若年層が、その後に正社員の職を得ることは極めて難しい。与野党の政治家、財界、労組、マスコミのほとんどが中高年の正社員の雇用維持を主張しているからである。
若年層の就職難に対する1つの解決策は、彼らを海外で就職させることだろう。なぜなら、日本企業は国内では採用を激減させているが、逆に海外支店での採用数は増加させているからだ。
また、中国をはじめとするアジア諸国では、外資系企業などが採用を増やしている。しかし現在の日本では、「海外に出て働ける高学歴層の若者」は、少数の帰国子女や海外の大学への留学生に限られている。そして、彼らでさえ、日本企業の海外支店や外資系企業が参加するアジアのジョブ・マーケットでは競争力がない。