今だから笑って話せる
手のひら形装置の開発過去

 そこで、仁内は“新発想”を採用した大掛かりな装置の開発にトライした。「手で折ればきちんと折れるんだから」と、なんと手のひらのような形をした折り曲げ装置を幾つも機械に取り付けたのだ。

 だが、この通称「パタパタ装置」は失敗に終わった。冷静になれば自明のことだが、手のひらは意思ある人間のものであるからこそうまく機能するのだ。

 結局、基本に立ち返り、従来機を地道に改良することで±3ミリメートルの誤差にとどめる折れ精度を実現した。「当時は『開発をやめるときが段ボール製函機をやめるとき。何とかしないと』と真剣だったけど、とっぴなことをやり過ぎた。今の(収益管理が厳しい)三菱重工だったら製函機事業はとっくにサヨナラされていたでしょうね」。仁内はしみじみと振り返る。

 EVOLは初号機の市場投入後も、波多野の下で顧客ニーズの高度化や、段ボールシートに使われる紙の品質変化などに合わせて着々と進化を遂げてきた。

 例えば効率性。セット替えは、Sシリーズの最終機では2分半かかっていたが、現在のEVOLでは速いものなら2分以内で済むまで時間短縮が進んでいる。

 たかが30秒と侮るなかれ。顧客は1日に約200種類もの段ボール箱を作る。EVOLの最新機の製造速度は、Sシリーズの毎分300枚から大幅アップし、最高毎分400枚。セット替えで30秒短縮できれば、段ボール箱にして1日に4万枚もの差が出るということだ。

 しかもEVOLは、狙い通りのスピードを、精度を保ちながら安定的に出すことができる。「EVOLはカタログ通り走る」とは、顧客からの最大の賛辞だ。

 製函機をはじめ、紙を加工する紙工機械は小さな町の鉄工所が安いコストで造れる機械だ。大手の三菱重工グループが手掛ければ、どうしても価格は高くなってしまう。「常にナンバーワンの性能に挑み続けないとうちの製品は買ってもらえない」(仁内)。

 仁内、波多野の胸の内には、紙工機械を背負うエンジニア魂がみなぎっている。(敬称略)

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)

【開発メモ】EVOL
 顧客の半数以上が海外企業になる中、最近「デュアルスロッター」を開発。生産量が日本とは桁違いに多い海外の顧客向けに、1枚の段ボールシートから二つの箱を作れるようにした。生産効率の倍増が実現するとあって、米国企業にはすでに販売実績あり。今後は欧州展開も狙う。ちなみに、EVOLの名前は「evolution(進化)」に由来する。