痴漢については冤罪疑惑ばかりをマスコミがセンセーショナルに取り上げる一方で、日々起こり続けている事件をいかに防止するかという議論がおざなりになっていることは否めない。日々起こるおびただしいほどの痴漢事件を防いでいくためには、加害者がいかにして犯罪に手を染めるのかを明らかにする必要がある。

 今回は、日本で先駆的な試みとして、社会内で性犯罪者の再犯防止プログラムを行う精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳氏に、彼らがいかに性犯罪に足を踏み入れていくのか、どのように被害を食い止めるべきなのかを伺った。

加害者の典型は4大卒で家庭持ちのサラリーマン
「普通の男性」が痴漢をする

――痴漢というと「性欲が強い異常な男性が行う」というイメージがありますが、実際はどのような人物が多いのでしょうか。

斉藤 法務省が発行している「犯罪白書」(平成27年)によれば、痴漢を行う男性で最も多いのは4大卒のサラリーマンなんです。このうち既婚男性は34.7%。社会的な地位がない、彼女もいないし家庭も持っていないようなモテない男性が、性欲を持て余して痴漢を行うと考えられがちですが、これは間違っていると言えるでしょう。

 実際にクリニックで性加害者の治療にあたっていても、異常者というよりは、いたって普通のどこにでもいる男性という印象を受ける人が多いですね。

――そうした普通の男性が痴漢に手を染めてしまうきっかけは何でしょうか。

斉藤 電車が揺れた瞬間たまたま目の前の女性の胸や臀部などのやわらかい部分に触れてしまい、その快感が忘れられず反復するようになり、徐々に行為がエスカレートしていったというパターンが多いです。あとは、ほかの男性が痴漢をしているところを偶然目撃し、女性が抵抗しないのを見て「自分にもできるかもしれない」と考えて始める人もいます。

――「偶然」が起こってしまったあと、繰り返し痴漢を行うようになっていくのですね。

斉藤 痴漢は再犯率が高く、加害者が反復する性的逸脱行動の結果、性依存症に陥っているケースが多く見られます。性依存症とは、簡単に言うと社会的損失や経済的損失などのリスクを承知していながら自分の性的欲求や衝動をコントロールできない状態のこと。分かっているのに痴漢がやめられない、衝動の自己統制が効かず徐々に行為がエスカレートしているなどが見られる場合、性依存症だと考えられます。