9月25日、安倍晋三首相は「国民に信を問う」と述べ、28日に衆議院を解散し10月22日に総選挙を実施すると表明した。ただ正直なところ、何の信を問うのかが分りにくい。
安倍首相は、2019年10月に予定の消費税率の引き上げ(8%から10%へ)による財源を、幼児教育と保育の無償化に充てるという“政策の変更”の是非を国民に問うとしているが、この時期に選挙をする本当の理由はそれだけなのだろうか。にわかには信じられない気がする。
すでに政府は、少子高齢化が進む中で人材への投資を重視してきた。その考えに照らせば、本当に“信を問う”ほどの内容といえるのか。いささか疑問の余地がある。むしろ、安倍首相とすれば、「足元の国内外の情勢をうまく使い、この場で総選挙に踏み切って政権の安定を実現したい」というのが本音のように見える。
“とってつけた感”の理由による突然の総選挙だけに、その結果は読みづらい。それがわが国の将来を大きく変えてしまわないか気がかりだ。
逆に言えば、
理由がはっきりした突然の選挙
足元の経済情勢を見ると、実質ベースで人々が手にする可処分所得は増加しづらい状況が続いているものの、曲がりなりにも、わが国の景気回復は続いており、“いざなぎ景気”を抜いて戦後2番目の長さに達した可能性が高い。ということは、経済状況を見る限り、今ここで選挙をすることは与党には“追い風”になることが想定される。
一方、安倍首相は、今回の解散総選挙に“国難突破解散”という仰々しい表現を用いている。その意味は、いま一つ明確ではない。むしろ、本音を言えば、「何とか過半数を取って政権の延命を図りたい」というのが本音なのだろう。