これまで、東北で復興支援に挑む若手起業家の活動に焦点を当ててきた。これからの2回の連載では、最前線で行動する起業家を、「非・被災地」である東京や海外とのネットワークを使って後方支援を行う人々の動きを追う。
  今回、紹介するのは自らのキャリアを大きく変え、東北に戻って活動を始めようとする若者たちと、それを仕掛けたNPO法人ETIC.の活動だ。

一部上場企業を辞めて、復興支援の道へ

「僕に何かできることはないかと思って、やめちゃったんですよね」

復興のために、「東北Rokuプロジェクト」に参画した藤澤明弘。

 藤澤明弘(25歳)は一部上場の流通企業を退職し、復興支援の道へと進んだ。大学時代を過ごした宮城に恩返しがしたい、その思いゆえの選択だった。

 自らの経験を活かして、復興に携われることはないか。そう模索していた時に出会ったのが、「農業の六次産業化」(注1)を推進する「東北Rokuプロジェクト」だった。しかもこのプロジェクトは、障がい者に活躍の機会を与え、業務の主力として雇用するという壮大なプロジェクトでもあった。彼らは、農産物を生産するだけではなくて、販売やレジャーとしての機能も充実させた次世代のショッピングモールを開設しようとしている。その新しい発想が、藤澤を惹きつけた。

 この2者が出会ったことで、新しい化学反応が生まれた。大手流通業で培った藤澤の経験と、あえて復興支援の現場に飛び込もうという前向きな開拓精神こそ、東北Rokuプロジェクトが求めていたことだったのだ。藤澤は今、東北Rokuプロジェクトのプロデューサー・島田昌幸氏の「右腕」として、店舗開設を担当するマネージャーとして、仙台市や名取市で、日々奮闘している。

 藤澤のように復興支援の道へ転ずる若手社会人は、実は少なくない。むしろ緊急支援のフェーズが落ち着いてからは、藤澤のようなケースばかりを見る。東北にゆかりのある人材が、東北の危機に黙っていられなくなり、勤めていた企業や組織を辞め、人生を賭けて東北の復興に挑もうとしている。


(注1)ここでは、生産、加工、販売の融合を目指すことで新たな付加価値の実現を目指す動きを指している。