ヤフーが2012年から続ける「1on1ミーティング」は、上司と部下が毎週1回、30分間行う対話である。部下の数によっては、週の仕事の半分近くが1on1で占められるケースもあるという、この1on1、一体、何を目指して実践されているのだろうか。
半期に一回の「面談」とはまったく違う
ヤフーが2012年から全社で実施している「1on1ミーティング」が、産業界で注目を集めている。
1on1は文字通り、上司と部下による1対1の対話であるが、多くの企業で行われる「業績面談」などとは、大きく異なっている。
例えば、ヤフーの1on1は原則として週1回、30分程度かけて行われる。通常の面談は、おそらく半期や四半期に一回というペースだろう。まずは頻度がまったく違うのである。
一方、対話のあり方も違う。
業績面談の場合、目標を達成したかどうかを確認し、部下の仕事ぶりに対してフィードバックを行う、というのが一般的だろう。往々にして、それに上司の訓示や激励、あるいは指導や経験談の開陳もあるかもしれない。
ヤフーの1on1は、そうではない。なによりも特徴的なのが、1on1は「部下のための時間」と明確に定義づけられていることだ。
毎週1回、30分の対話は、基本的には部下が自分の考えを話すことで進められる。上司は、なかなか言葉にならない部下の思いを引き出す努力はするものの、結論を先取りしたり、決めつけたりはしない。
その30分で上司は部下の業務の進捗確認を行い、また問題解決をサポートする。そして、これが1on1の最大の狙いだが、対話を通して部下の目標支援と成長支援を行うのである。
そのコミュニケーションが目標支援と成長支援につながるように、マネジャーたちはコーチング研修を受けて「傾聴」のし方を学び、有効な「フィードバック」の手法を身につける。
端的に言えば、ヤフーの1on1は人材育成を目的とする上司と部下との対話なのである。
1on1の根底にある考え「コミュニケーションは頻度が大事」
上司と部下がわざわざ時間を取って行う1on1は、有体に言えば面倒なものだろう。「毎週、時間を取ることなどできない」「毎週1回なんて、そんなに話すことなどない」といった意見もあるに違いない。
軽くはない負担は覚悟の上で、ヤフーが毎週、1on1を実践するのはなぜか。制度導入の中心人物である本間浩輔・上級執行役員 コーポレート長は次のように説明する。
「半年に1回飲み会をするよりも3カ月に一回ランチを食べる方がいいし、3カ月に1回ランチを食べるよりも毎月1回1時間話した方がいい。毎月1回1時間話すよりも毎週15分づつ話した方がいい。コミュニケーションは頻度が大事です」(本間浩輔著『ヤフーの1on1』より)
このような高頻度のコミュニケーションがもたらすメリットは、いくつもある。